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第4話
「僕……したことない。初めて」
赤面をこらえて、小声を絞り出して言うと、亮ちゃんはちょっとムッとしてた。
「当たり前だろ。誰とするんだよ。俺以外の」
「ごめん。亮ちゃん、怒んないで」
そんな相手が僕にいるわけないだろ、亮平の他に。新生児室の保育器に入ってた頃からずっとセットで、いつも一緒だった。昔は一緒にお風呂も入ったのに、今はちょっと、恥ずかしくて無理。
抱きしめてくる亮平の体が逞 しくて、強そうだった。喧嘩になったらもう勝てない。勝てっこないのも子供のころから分かってたことだ。
僕、亮ちゃんが好き。ずっと好きで、一緒にいたい。大人になったら何になりたいかって誰かに聞かれても、何も思いつかなかった。亮ちゃんと一緒にいられたら、別に何でもいい。サッカー選手は無理。でも弁護士なら頑張れるかな?
それで、亮平にはずっと、亮ちゃんは弁護士になるんだろって言ってきた。そのほうが格好いいよ。僕は弁護士になった亮ちゃんが見たいな。きっと、亮ちゃんのお父さんみたいに格好よくて、いつも真面目で堅物そうだけど、でもいつも側にいてくれる、そういう誰かの素敵な……素敵な彼氏になるのかな。誰かの……。
僕のじゃない。だって。亮ちゃんは。
いつから僕が好きだったの?
「触っていい……?」
淡い懇願の声で言って、亮平は僕のスカートの中に手を入れた。
スカートの中? なんだろうこの世界。僕にスカートの中があるなんて!
でもあの文化祭のステージの上で見た、亮平の熱い目。スポットライトの後光がさしてて、まるで、まるでなにか……そう、狼人間。僕を食べに来た怪物みたいだった。
でもそう見えたのは一瞬で、亮ちゃんのロミオはキスする間ずっと目を閉じてた。見ちゃダメだって決めたみたいに。
僕を見て。亮平。あの時みたいな熱い目で、また僕を見てよ。
食べていいよ。僕も今日、君を食べる。
熱く燃えてる息が聞こえて、亮平の手が指が、まだ布越しの僕の体に触れた。それじゃ足りない。脱がせはしないレースの奥の、濡れた素肌に亮平の指が来て、僕は呻 いた。
やばいこれ。どうしよう。気持ちいいい。亮ちゃんの手。亮ちゃんの手だ。
「だめ……僕だめ、そこ……亮ちゃん」
指で弄 られて、恥ずかしくって僕は抵抗した。甘い身悶え。逃げる気ないのに、誘うみたいに逃げるフリ。それに狼さんは追いかけたい本能を刺激されたみたいで、亮ちゃんの手はもっと意地悪くなった。
「気持ちいいか、聡」
指で扱 かれてびくびくしてる僕の体を部屋のラグに押し倒して、背中から抱いたまま、亮ちゃんは繊細なレースの下着の中の、僕の敏感なところを虐めた。
「ここ……ここ入れるからな。痛くしないし……」
指先でなぞってきて、亮平は僕にそう教えた。気持ちよくするって。
でも指が入ってくると、思わず全身が引きつった。怖いよ、亮平。
お互いの熱い息を数え、僕は亮平の指がなぞる自分の体の中のことに集中してた。
こんなとこ、僕にあるんだ。知らなかった。自分でも知らない自分のこと。考えないようにしてた。自分が深い奥底に、ずっと秘めてた欲望のこと。
亮ちゃん、食べて。もっと僕のこと、強く抱いて。側にいて。もっと近く。お互いの体が混ざり合うぐらい近い、もっともっと奥の方に来て。
「あ……っ、だめ、そこだめ……だめだめ亮ちゃん! 触んないで」
亮平の指先が触れるとこがすごく気持ちよくて、体がわなわな震えた。怖い。僕どうなるの。こんな感覚、今まで味わったことなくて、自分でする時とは違う。亮ちゃん。ときどきあのキスを思い出して、我慢できなくて、亮ちゃんを思って自分でしたりした。それも良かったけど、でもこの抱擁の何分の一、何百分の一か。
亮ちゃんの手のほうが、ずっと気持ちいい。
「だめだめ、イキそう!!」
指入れられただけでイキそうで、僕は赤面して叫んだ。こんなの初めて。中入れられると気持ちいいんだ。指でもいいのに、亮ちゃんのでされたら、僕、死にそう。
「イっていいよ」
耳元に囁かれて、全身にぶるぶる震えが来た。嫌だよう。
「俺のがいい?」
息だけの声で、亮ちゃんが聞いてきた。亮ちゃんもさすがに恥ずかしいのかな。いつもしれっと無表情だけど、亮ちゃんの胸もドキドキしてるのは、抱きしめられた背中に感じた。
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