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第6話
「……社長、大変差し出がましいことをお尋ね致しますが」
俺の顔と彼の顔を交互に見た秘書サンは、軽く咳払いをして彼に尋ねた。
「もしかして奥様には、旅行の件をお伝えしていなかったのですか?」
聞きたいことを聞いてくれてありがとう。心でそう思いながら、口を開けたままウンウン頷いた。
「ああ!サプライズだからな!」
彼は殊更笑顔で大きく頷いた。
「お前サプライズヘタかよ」
思わず芸人みたいにツッコんでしまった。とはいえ意に介さないのはいつも通りだし。
「言ったら面白くないだろう? せっかくお前の仕事もオフにしたんだし」
まぁ俺の予定は彼の予定とほぼ同じなんだけど。しまいに「もちろん貸切だからな」とか言い出す始末で。かえって緊張するっつうの。
「ってことで、明日から1週間、リョカンに行くぞ!」
「マジかよ! 全然準備してねぇよ!」
着替えとかジムの予約キャンセルとか銀行回りとか。
降って湧いた非日常への誘いに、全然頭がついていかない。
1週間、パンツ一枚じゃ足りないよな。そんな庶民的なことしか咄嗟に思いつかない。
「今日はもうオフだ、これから一緒に支度しよう」
彼は子供みたいに目を輝かせる。支度ったって、必要な物2人分、いつも大体俺が準備するんだけどな。
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