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淫花廓

私有地、と書かれた車一台の幅の、木々に囲まれた道を進むと、突如として赤い欄干が現れる。   さらさらと流れる小川の上にかかる、このゆるやかな山なりの橋。 通称を、『戻り橋』という。   あの世とこの世を繋ぐ橋、として有名な一条戻り橋が由来なのだろうか。   誰が言い出したものかは知れなかったが、『戻り橋』と言えばこの橋のことだと、ここを訪れる者は皆わかっていた。   優美な赤い欄干を辿って、橋の向こうへ一歩でも入れば、そこは既に俗世ではない。     独特のルールと、治外法権がまかり通る現代の遊郭。   『淫花廓(いんかかく)』。   限られた人間だけが足を踏み入れることのできる、()の楼閣が佇む場所なのである。    

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