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ヤキモチ

西園寺は金曜日に訪れる事が多い。 張見世が開くと真っ先にマツバを指名し、一晩中抱きつくしてから明け方に帰っていくのがここ最近の西園寺のパターンだ。 男娼であるマツバには、客である西園寺に次の指名の約束や日にちの指定などができない。 大金を払う客には男娼を選ぶ権利があるからだ。 だからマツバはいつも彼がここに来て、自分を指名してくれる事を願いながら大人しく待つことしかできない。 張見世の格子の中でマツバは緊張と期待に胸を震わせながら着物をぎゅっと握った。 最近、金曜日のこの張見世の時間がひどく苦痛になってきている。 しずい邸の男娼はこの高級廓に相応しい、粒揃いばかりだ。 マツバより大人の色気漂う美しい男娼もいれば花も綻ぶような可憐な男娼もいる。 いつ西園寺が目移りをして他の男娼を選んでしまわないか、そんな事ばかりが頭を過っては胸の中を泥々としたものが渦巻くようになっていた。 こんな気持ちになるのは初めてで、マツバはどうしていいかわからなかった。 他の男娼の事など今まで気にも止めていなかったのに、自分が魅力のないものに思えたり、また違う男娼の容姿や仕草が気になったりしてしまうのだ。 その時、男衆の手によって張見世の前の重厚な門が開かれた。 それは淫花廓の店開きの合図だ。 「………ぁ………」 数人の客達の中、抜きん出て男ぶりのいい西園寺の姿を見つけて胸が高鳴る。 指名されて次々に格子から蜂巣に向かう男娼たちの中で、マツバの視線は西園寺の姿に釘付けになっていた。 自分を選んでほしい。 他の誰でもない自分を。 しかし、格子越しに見つめるマツバの目の前でその願いは呆気なく握り潰された。 西園寺が指名したのはしずい邸一の人気男娼、アザミだった。

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