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正しい立ち位置

「ア、アキ………あのさ……」 「ん?」 「本当にさ、俺でいいの………?」 「え?」 体を一度起こし向き合って座り、アキに問いかける 心のどこかでずっと引け目に感じていた、俺たちの力では決して消し去ることのできない障害がやはりまだどこかで負の感情として生きている きっと今から、アキともっとエッチなことをする その覚悟はできていると言えば半分くらいは嘘になるけどそれでもアキが望むなら、そう考えていた だけど本当にアキは、俺でいいのだろうか そりゃアキは好きだって言ってくれたし、俺としたいって言ってくれた だけどそれでもやっぱり俺の体は男なわけで、胸もなければ肌の柔らかさもない あると言ったってお尻に少し無駄な肉が多いだけだ 「ア、アキは好きって言ってくれたけど俺は実際男だし、途中でやめたくなったり、しない………?」 「翔…………」 「あっ、い、嫌ならいいんだ、全然」 取り繕うように笑う これでやっぱり嫌かもなんて言われたら少し傷付いちゃう かもしれないが、言ってしまった手前もうどうすることもできない するとアキが俺の手をぎゅっと両手で握った 「オレは、嫌になったりしないよ」 「で、でも…………」 「翔こそいいの?オレとシても」 「え…………」 アキは暖かい手で俺の手を強く握って言った そんな回答に内心安心しつつも、アキの問いかけに新たな疑問が生まれる そう言えば俺だって同じだった アキのことばかり考えていたけど、俺だってアキと同じように同性とすることになる 俺にだって同じ質問が向けられる可能性があったはずなのに、俺はそのことをすっかり忘れていた だけどなぜだか心はとっくの昔に決まっていて 「おれは………いい、よ……………」 「……………そっか、ありがとな、嬉しい」 小さく頷く俺をアキがぎゅっと抱きしめる 優しく頬にキスを受けると、性別なんて障害もどこか軽いものに思える気がする きっと気のせいだろうけど そのままゆっくりとベッドに倒される 再び冷たいシーツがTシャツ越しに背中に触れて、アキの大きくて温かくて優しい手の平は俺の頬に添えられる 「オレが抱いてもいい?」 「あ………えっと……」 「翔がオレのこと抱く?オレはそれでもいいよ」 「ぁ…………う…………………」 優しくしおらしく、アキがそう尋ねた アキの表情を見ると、落ち着いたような大人っぽくて優しい微笑みが浮かべられている きっと“抱く側”ってのは“挿れる側”ってことだと思う そりゃ俺だって男だ アキと出会ってなければいつかは誰かとすることになっていたかもしれない そんな時きっと俺は“抱く側”だろう だけどアキと俺なら、きっと俺が……… 「……ア、アキがして、いいよ…………」 「…………ん、ありがと」 「お、俺はじめてだから、その……リードしてね…」 「ん、オレに任せて、な?」 恥ずかしくて上手く言えなかったが、心の底から出た本心だった アキとするならきっと俺が“抱かれる側” 何となくだけどそれが俺の中でも自然だったし、逆だと変な感じになる気がした それにこんな俺に誰かをスマートに抱けるような甲斐性なんてない だからきっと“こっち”が正しい立ち位置だ 「んっ……………」 「緊張しなくていいよ、ゆっくりするから」 「んッ………ん、っ……ン…………っ」 優しく諭され口を塞がれる ふんわりと触れた柔らかい唇が、強張った肩の力を徐々に緩めていく アキの左手が器用に俺の下着を脱がせる 俺の少し温かい生肌にアキの手が触れてくすぐったさを感じる 「ちょっと濡らすな」 「ん………… 「少し温めるからちょっと待っててな」 そう言うとベッドの隣の棚からローションなるものを取り出すアキ 使った形跡のない新品のそれを見て、心のどこかで安心する自分がいる 優しく微笑んでくれるアキに少しだけ笑い返すと、アキも目を細めてまた笑ってくれる ローションを手のひらに取りしばらく体温で温めるアキ その姿をじっと眺める俺の心臓は少しずつ鼓動を速めて大きくなっていく 「触るからな?気持ち悪かったら言ってな?」 「んッ……………!」 下着を脱がされ下半身丸出しになった俺の脚を開かせる そしてローションで生温かく濡れた指で、俺の窄んだそこにぺとりと触れる 思わず体がビクッと震える 自分の指でだってまともに触れたことなんてない そんな場所をローションで濡らされ、くるくると緩く刺激をされ始める 「んっ………ぅ、あ………」 「大丈夫?気持ち悪くないか?」 「だい、じょぶ………」 「よかった、少しずつ慣らしていくな?」 お、お尻の穴にアキの指が…………っ うわわわ、こんな所誰かに触られるなんて…… 快感よりも違和感の方が強く感じる 勃起していたものは会話の途中から一度元気をなくして下を向いて以来そのままだ だけどアキに触れられているという事実は心地良く感じる 「少しずつ指挿れるよ」 「ん、んっ………」 「ほら、力抜いて、な?」 「ん…………っ、ン……」 アキの声に頷くと、太い指が穴に突き立てられた この時の俺は、今後一生付き合い続ける快感と出会うことになるなんて思ってもみなかった

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