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はじめての
「翔、今からマジでするんだぞ、本当にいいのか?」
「んっんっ……して、いいよ……っ」
「ん、嬉しい、優しくするから」
「んっ……………」
痛みすら感じないほど滑らかに俺のお尻から3本の指を引き抜かれる
ぽっかりと口を開けたそこは空気に触れてぴくぴくと痙攣し、驚くほど敏感になっている
床には俺が着ていたアキに借りたTシャツや下着、それにアキのスウェットのズボンが散らばる
お互いに生まれたままの状態で向き合う
今からアキとどんなことをするのか、理性の飛んだ頭でもちゃんと理解出来ている
そりゃ恥ずかしくないかと聞かれれば1000パーセント恥ずかしいに決まっている
アキに俺の恥ずかしい所全部見られてもう何回もイかされて、自分でだって触ったことのない場所に触れられた
だけどアキだから
俺の好きなアキにだから許せるんだ
こんなこときっと、他の誰かに許すことは不可能だ
アキが慣れたように体勢を変え俺の脚の間に入ってくる
さっきよりもぐんと大きく反り勃ったアキのものが、さっきまで指を飲み込んでいたそこに触れる
そして柔らかい枕を俺の腰の下に差し込み、そっと俺の前髪をめくる
「痛かったらすぐ言えよ、な?」
「ん…………っ」
「……一緒に気持ちよくなろうな」
ちゅ、とおでこに優しいキスを落とされる
ぎゅっと瞑った目をゆっくりと開けると、目の前には真っ赤な顔で優しく微笑む彼氏の顔
真っ赤に染まった頬に、優しげに細まった目
少しハの字に傾けられた太くキリッとした眉
薄い紅色の唇をぐっと噛み締めて笑う
本当、どんな顔しててもカッコいい…………
「挿れるぞ?」
「んっ……」
俺の後ろにアキの熱いものがぴたりと当てがわれる
それだけで俺のそこはピクッとアキのものを心待ちにしていたかのように反応してしまう
そして次の瞬間、さっきの指とは比べ物にならないくらいの衝撃が俺の後ろを貫きはじめた
「あ゛っ………ぁ…ぁあ、あああッ……」
「っ……………!」
「ぅあ…ン、あっ、アァ……ッ!」
「ほら、ゆっくり深呼吸して、力抜いて」
「は、はぁ…っ、あっ、ああ…ん」
アキの熱くて大きくて太いものが俺の中にヌプヌプと音を立てて挿入っていく
さっきとは比べ物にならないくらい大きく広がったソコがじんじんと痛みを生む
やっ、やばいっ………!
アキのちんぽが、俺の中に……………っっ
い、痛いっ…!!
なにコレ……っ
アキのが大きすぎて、俺の後ろ広がっちゃうっ………!!
「い゛っ………あっ、う、アっ…………」
「ごめんっ、痛かったな、一旦抜こうか」
「あっ………や、やぁ…………っ!」
あまりの大きさに思わず痛い、と口に出してしまいそうになる
間一髪の所で唇を噛み言葉を飲み込むが、アキは俺の小さな表現でさえ見逃さなかった
落ち着いた声色でそう言うと、ゆっくりと俺の中から退こうとし始める
やっ、やだ………!抜かないでっ………!!
せっかくここまで来れたのに……………っ!
やっとここまで来れたんだ
はじめての感覚も痛みも全て、俺たちの思い出として体に刻みたい
失敗になんてしたくないから
だから
決死の思いで俺は両脚を持ち上げ、アキの腰へと回して、アキのものが抜けないように制御した
そして腕をぎゅっとアキの首に巻き付け、体が離れないように必死にしがみつく
「っ!翔!?」
「っや、抜かなっ、で……だいじょ、ぶ、だからっ…」
「でも………」
「おれ、っ…はじめて、だか、ら…痛いの、あたりまえ…だ、から……っん」
「翔……」
ここに来るまで、いや、付き合うまでだって俺たちの間にはトラブルがあった
だけどそれを全部乗り越えて今、ここにいる
ちょっと怖いけど
少しくらい痛くたって、アキのことが好きだから
少しくらい痛くたって、アキと繋がりたい
俺とアキが恋人なんだって心でも身体でも実感したい
「だからっ…やさしく、っ…シて……?」
アキの首に絡めた腕で上体を起こし、ぐいっと引っ張ってアキの顔を引き寄せる
するとアキは、コツンとおでこをくっ付ける
至近距離でも分かるアキの笑った顔
この1ヶ月、常に笑っていたアキの笑顔なんて近くても遠くても俺には丸わかりなんだ
アキの顔を見て俺も自然と頬が緩み笑みがこぼれる
アキは大きな手を俺の頭に回し、そしてゆっくりと唇を合わせる
それを俺は目を瞑って静かに受け入れる
少しの間だけくっついた唇が静かに離れる
「オレ、今最高に幸せかも…」
「かもってなんだよ…バカアキ………」
「ごめんごめん、最高に幸せです」
眉をきゅっと下げて笑うアキ
そんなアキの幸せを噛みしめるように笑った顔が大好きで、アキを抱く腕に少しだけ力を込める
アキは俺の背中に手を回して優しく抱きしめてくれる
俺だって、こんなにアキが好きでいてくれて、幸せだ
まだたった16年の人生で、こんなにも早く心から好きだと思える人に出会えるなんて思いもしなかった
アキに出会えたことは、きっと俺の人生で最高の勝利だ
じんわりと涙が溢れてくる
だけどこれは痛みなんかのせいじゃなくて、温かくなった俺の心のせい
いや、俺の心を温かくしたアキのせい
自分の涙を誤魔化すようにアキの短くて黒い髪を少しだけ撫でてみる
するとアキはんふふ、と照れたように笑う
俺を抱きしめる大きくて熱い手が、生身の身体をもっと火照らせていく
「翔、好き、大好き…………愛してる」
「ン…おれも、すきっ……だいすきっ……」
「オレのこと選んでくれてありがとうな」
「こっちのセリフだ……っ、ばかっ……」
ごしごしと腕で涙を拭いながらアキと見つめ合う
幸せを噛み締めるように笑うアキの顔を見て、俺も幸せを噛み締める
もう一度おでことおでこをくっ付けられると、お互いの熱がお互いの体を行き来するみたいに熱い
あぁ俺、こんなに幸せでいいの………?
平凡な転校生でクラスメイトCの俺が、こんな主人公みたいな幸せ貰っちゃっていいの………?
「ゆっくり入れるな?」
「んっ………きて………………っ」
「ここ、ぎゅって掴まっててな?」
「んんッ………ぁ、あぁっ………っ」
再び静かにベッドに倒され、途中まで入れられたものがまた俺の中へと押し進む
アキがいつの間にか緊張を解してくれたおかげか、さっきのような鈍く鋭い痛みは感じない
それどころか心が幸福でいっぱいの俺には、まだ少し残る小さな痛みですら気持ちよく感じる
「ア、アキ…っ、ぜんぶ…はい、った……?」
「まーだ、もうちょっと我慢できるか?」
「っ、ばぁか……ン、なめん、なっ……」
「ふふ、かわいーやつ」
にっこりと余裕の笑みを見せるアキにちょっとだけ対抗して余裕ぶって笑ってみた
本当は余裕なんて、これっぽっちも無いけれど
だけどこんなに幸せなんだから、きっと上手くいくはずだ
そう心の底から思えた
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