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学校生活
よく晴れた日の昼休み
「静ちゃん、おれさっきね」
「こら、食いながら話すんじゃねえ」
「あはは、健最近ずっとはしゃいでるな!」
「うんっ!」
六条静磨くんが学校に顔を出し始めて今日で4日目
最近は彼とも一緒に行動することが増えてきて、俺も嬉しく感じている
と言っても元々接点の無かった俺は、実はまだあんまり六条くんとは話せていないけど
六条くんの膝の隣にくっ付いて大きなおにぎりをご機嫌で貪る健
その右耳には赤い小さなピアスが光る
「翔、今日の弁当もすげえ美味いよ」
「……………いいって、わざわざ言わなくて」
「オレが言いたいから言ってんの」
「ちょ…………あんまくっ付くなってば…」
そして俺の隣で同じようににこにこ顔の男がもう1人
俺の恋人、広崎輝
アキとは付き合って1ヶ月半くらい
この学校に来てもう2ヶ月も経ってしまっていることを実感させられる
そんな俺の恋人はまるでにこにこと機嫌の良い犬のように笑って、毎朝早起きして作る俺お手製の弁当を口に掻き込む
「ふふ、静ちゃんすきぃ………」
「ああ、俺もだ」
昼食を取り終わった健が、六条くんにべったりとくっ付いて甘えている
もうあの“寂しい”が言えなかった健が嘘のように、ここ数日ずっとあの調子だ
まあ付き合いたてだしな、と心の中で思うが俺たちもまだ大差ないことに気付き勝手に恥ずかしくなってしまう
でも六条くんって、こんな人だったんだ………
アキから聞いていた通りとても優しくてクールな人だとは思っていたが、それでも先入観のせいでどこか怖い印象を彼に抱いていた
だけど健とのこの様子
表情こそ変わらなくて読み取れないものの、どこかふわふわした甘い雰囲気を醸し出していることに多少なりともギャップを感じている
「こらこら、学校でイチャつくな〜」
「いーの!好きだからいーのっ!」
「………………お前らに言われたくねえしな」
くっ付く2人をからかうアキ
だがそれでも健は六条くんから離れようとせず、六条くんも同じのようだ
それどころかボソッと呟かれた一言で返り討ちに遭ってしまうアキ
どうやら頭が良くて策士な学校一の人気者も、学校一の秀才には敵わないようだ
「やっぱり2人、距離近いと思ってたんだ〜」
「なっ………!」
「あは、健って意外と鋭いのな!」
「えへへ〜、おれ鋭いの〜」
そしてこの会話
あれ?と思った人がきっといるはずだ
そう、俺とアキの関係
それが健と六条くんにも知られてしまったのだ
と言うよりかは自分たちの意思で話した、と言った方が正しいのだけれど
元々六条くんには勘付かれていたし、最近知ったがあの公園でアキがあっさりバラしてしまったらしい
「お、お前がくっ付いてくるから………!」
「何だよー、いいじゃんこのくらい」
「もっ、もう!あっちいけ!」
「翔のいけず」
まあ俺も健と六条くんの関係を知ってるし
ここはお互い周りにはシークレットと言うことで同盟を結んでいるのだ
だがアキのこの態度
きっとあまり周りを気にせずくっ付いてイチャつく2人に感化されているのだろうが、だからと言って教室でこんなにベタベタされては困る
アキの胸をぐっと押しのけてちらりと教室の真ん中あたりに視線を寄越すと、何だか妙な視線も感じる
「おれ売店行ってくる!」
「……………待て、俺も行く」
「うんっ!」
健がカバンから猫を模したがま口を取り出してぴょんっと椅子から立ち上がる
それにまるで護衛のような強面の男も便乗し、ポケットに手を入れたまま立ち上がった
そして俺たちを残して、2人で教室を出て行ってしまう
「んふ、2人っきりだな!」
「き、教室にはみんないるだろ……」
「あはは、そうだった」
それなりに騒がしい教室
アキは2人っきりだと言って頬杖をつき俺の顔をじっと見つめてくる
それが何とも恥ずかしくてぷいっとそっぽを向くと、あははと笑って頭を撫でてくる
本当、こいつのこの激しめなスキンシップ
いつか墓穴を掘りそうでひやひやする…………
だけどアキに触られることは嫌いじゃないし、本音を言えばむしろ好きだ
それに無駄に整った彫刻のような顔で見つめられるのも、恥ずかしいけど本当は好き
だから本気で否定出来ずにいるし、半分は否定したくないと思う軟弱な意志を持つ俺のせいでもある
「な、翔……」
「な、何だよ」
するとさっきまでの大型犬のような人懐っこい表情から一変、今度は少し色っぽい雰囲気で俺に近付き椅子に座ったままおもむろに腰に手を回される
「な、今日…………………いい?」
そして耳元でふっと息を吐くように囁かれる
そんなアキのエッチなお誘いに、俺は思わず顔を赤くして固まる
それと同時に胸の鼓動が一気に加速してどくんどくんと俺の骨を揺らす
い、今急にそんなこと……………!
だがそれを拒否できないのは、きっと俺が甘ちゃんで
それに加えて俺もアキとそういうことをするのが苦痛でないからだろう
俺はゆっくりと首を縦に動かしてアキのそれを受け入れる
「輝くんいるー?」
すると教室の外からアキを呼ぶ女子の声
とっさにそちらに顔を向けると、そこにはサバサバした感じの背の高い女子とその影に隠れる小柄で可愛らしいタイプの女子
そんな光景に少しだけ心を痛めるが、今更こんなことで辛いなんて言えない
「翔、ちょっとだけ待っててな」
「う、うん…………」
アキが囁くようにそう言って席を立つ
毎日のように違う女子がアキを訪問してくる
理由は俺にも分かっているし、そんなことをする女子を疎ましく思うことも筋違いだと思ってる
だけどそれでもたまに“行かないで”と言いたくなる時が俺にだってある
「はぁ………………」
思わず出てくるため息
こんな所アキに見られてしまったら、きっと気を使わせちゃうよな
そう思いながらぐっと箸を握り再び弁当に手をつけ始めると、急に視界が暗くなった
「あのさ」
「へ…………」
「ちょっと聞きたいことあるんだけど」
顔を上げるとそこにはどこか怖い雰囲気を醸し出す女子が3人
威圧感のある声に、俺は思わずカチンと固まり箸で掴んでいたおかずを落とす
何か、嫌な予感がした
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