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俺にとっての幸せ
「あ゛っ……あっあっ……ぅ、あぁ…ッ!」
「はっ………はっ…………」
「あきっ……だ、めっ…これっ、んぁっ…」
「んー?」
いつもと違う、アキのピストン
いつもより腰を打ち付けるスピードは速く、勢いも強い
パンパンと肌のぶつかる音はいつもより高く弾み、広い部屋に大きく響く
お腹の中を抉られるような感覚
だが決して痛みを伴うわけではなく、むしろそれが気持ち良いと感じてしまうほど
や、ヤバい…………っ
こんなセックス、俺知らない…………っっ
「ひぁ、あっ……あっあっ……ア、アッ……!」
「っ………はぁ……っ」
「だめっ、は、げし…………っ」
「激しくしてもいいって言ったろ?」
今度は俺の体をぎゅっと抱きしめるように腕を回し、顔を近付けて腰を揺すられる
視界がアキでいっぱいになって、ますます脳みそがおかしくなってくる
だがそんな俺への攻めが緩むことはない
むしろ激しさを増しながら、的確に俺の気持ちの良いポイントを突いて抉るような快感を与えていく
近くでニヤリと笑った男前な顔が徐々に近付き、俺の唇を強引に奪っていく
今までだって強引な方だと思っていた
子犬のような顔をして狼みたいだ、なんて思ったこともあったしそれなりに激しく揺さぶられた経験もある
だが今日のはそんなレベルじゃない
始めたが最後、人の形を保っていられるかも不安なレベルだ
そのくらい、口では言い表せないほどに激しく強引に、でもテクニカルに抱いてくるのだ
「んッ、あっ……あぁっ、ぅ、あ゛ッ……」
「辛くないか?」
「だい……じょ、ぶ………っ、んっ…」
「ん、じゃあもっと激しくするぜ?」
乱れた俺の前髪を掻き分け、アキが落ち着いた様子で俺にそう尋ねた
この時“辛い”と言っていれば根っこの優しいアキはきっといつもの優しいセックスに戻してくれるだろう
だけど言いたくなかった、“辛い”だなんて
今日はアキに満足してもらうために俺が頑張る日
こんなところで根を上げるつもりは無いし、俺はこれでも一応男だ
ある程度乱暴にしたって、そう簡単にぐちゃりと壊れたりはしないはず
それに多少戸惑ってはいるが“辛い”だなんて微塵も思っちゃいないんだ
俺はアキとの愛を深める行為に辛さなんて感じないから
だから
「もっと………っ、もっと…して………っ」
「っ…………あんま煽るなって……っ」
「あぁっ!あっ、ン、んっんっ……!」
「は……………っ」
俺は何度も縦に頷くと、両手を広げそしてアキの大きな背中にぎゅっと抱き付いた
ぴたりと密着するアキの素肌は少し汗ばんでいて、ぺたぺたと皮膚がくっ付く
そんな背中にぎゅっと腕を巻き付けると、アキも俺を囲うように腕を回してくれる
目も耳も鼻も口も、そして感触も全てをアキに支配された俺は我慢することなく高い声を上げて啼く
「ぅあっ……あ、あきっ……ん、んんっ……」
「んっ……………翔……っ」
「ン、んぅっ、ん………っ、んっんっんっ…」
「っは………っ、すっげえ気持ちい…っ」
キスが欲しくて名前を呼ぶと、アキはいつものように俺に深い口付けを施す
キスの最中も激しいピストンに変わりはないが、口の中を弄られているだけで感度が上がる
深く口付けた唇を一度解放すると、アキは汗ばんだ真っ黒い髪をガバッと掻き上げそしてもう一度キスの雨を降らせる
「んっ、ぅ……あっ、アっ……まっ、あぁっ…」
「っむ………ッ、は………っ」
「ひっ……あっ、アッ………それっ……」
「ん、綺麗に付いた」
アキが俺の着ていたTシャツをガバッと脱がせる
そして今度は一度腰のスピードを緩めると、素っ裸になった俺の体に赤い鬱血後を刻み始める
耳の裏、首筋、鎖骨、胸、色々な場所にマーキングするように痕を残すアキはそれが上手くいくと逐一嬉しそうに微笑んでいる
強引な獣みの強い最中でも、時折見せるアキの優しく満足げな表情
そんなアキの表情に思わず見惚れてしまっていると、それに気付いたアキがニヤリと笑って俺を見つめ返す
「ふふ、すっげえ見てくる」
「ぅ………だって………っ、んっ……」
「な、翔も付けて、ここ」
「ん……………ッ」
改めて指摘されると少し恥ずかしくなって目を逸らしてしまう
だがそんな様子の俺をいつものように絆すと、自身の鎖骨のあたりをトントンと指でつついてキスマークを求める
俺はアキに指示された通り、鎖骨の近くに唇を付けてヂュッと強く吸った
痕を確認するために唇を離すと、やっぱり俺はキスマークを付けるのが上手くないらしい
横長い不格好な赤い痕が、ほんのりと残っているだけ
「んふ、やった、翔に付けてもらっちゃった」
「う………でもあんま、上手くない…っ」
「はは、もう1個くれんの?」
「んッ……リベンジ…………っ」
それでもアキは嬉しそうに笑い、ゆらゆらと腰を揺らしながら満足げに微笑む
そんなアキにリベンジも兼ねてオマケのキスマークを付けると、もっと嬉しそうに笑って俺の頬を撫でる
あぁ…………幸せだ
激しいセックスも、
合間のキスマークタイムも、
全てが俺の心に幸せをもたらしてくれる
この日俺は悟った
快感を与えられ気持ちよくなることが幸せなのではない
アキに抱かれるから
下手なキスマークでも喜んでもらえるから
どんな形であれ、アキと愛を深め合う行為が出来ているから幸せなのだと
だから幸せなのだと、俺は知った
だから尚のこと、アキには満足して欲しいという思いが俺の中で強まった
俺と深く激しく交わり、何度も体を重ねることがアキにとっての幸せに繋がるのなら
すでに幸せな俺にはアキを幸せにする役目があるのだと
そう思ったんだ
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