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翔怒りのゲンコツ

「ぁ……ひぁ…………ぅ……はぁ……っ」 「上手にイけたな?」 「ん………きもち……かったぁ…………っ」 危惧していた2回目のお誘いも、半分流れに身を任せるような感じで無事にクリアし、二度目の射精を終えたばかりの俺 くてんと肘を折ってベッドに萎れ、はぁはぁと浅い呼吸を繰り返す 何だか色々誘うための作戦も練ったけど、結局忘れて思うがままに誘ってしまった もし引かれたらどうしよう、なんて思っていたがその心配は無用だったよう アキは嬉しそうに俺を抱きしめて、俺を死ぬほど気持ちよくしてくれた それに1日に2回なんてシたことがなかったので体力が持つか心配だったが、意外とイケることが判明 やっぱりこれでもあくまで自分は男なんだな、と気付かされる 俺、いよいよ本気でヤバいかもしれない……… セックス、やめられなくなっちゃうかも……… 今後が少し心配になるほどに、自分がアキとのセックスに溺れている自覚はある だがそれでも、やめられない 「抜くから力抜いててなー………」 「え……っ、まっ、なん……で……っ」 「もう十分だぜ、ありがとな」 「で、でもアキの……まだ硬いよ………?」 「ん、オレはいーの」 するとアキが、まだ俺の中で硬いままなはずなのにおもむろにそれを抜こうと腰を引かせた な、なんで…………っ!? 俺はてっきり再びピストンを再開させられると思い待っていたのだが、どうやらアキは俺が思っている以上に俺に気を使っているみたいだ 自身のものが硬かろうが、アキにとって優先すべきは俺なのだろう 「だめ………っ、抜かな、いで………っ」 「翔……………」 「アキも、ここで出すの………っ!」 「でも…………」 くるりと上体を起こして咄嗟にアキの腕を強く掴む このまま解放してしまっては、アキに逃げられてしまう気がしてぐっと力を込める それでもアキは、困ったように笑って俺の中から自身を抜こうとする だがそんな優しい“気遣い”が、俺には少しアキとの壁を感じるきっかけになってしまった 今までアキの優しさに何度も救われた 俺が引っ越してきてからも、付き合い始めてからもアキはずっと俺に対して優しく接してくれていた だけどたまに、そんな優しさが逆にアキとの距離を遠ざけているように思う時がある アキは俺に、気を使い過ぎだと 恋人なのに、アキと付き合っているのは俺なのに それなのにアキは俺に気を使い過ぎていて、ありのままの姿を見せてくれていないような気がして寂しい 本当はもっと、アキの思うままに抱いてほしいのに もっとわがままに、求めてほしいのに 何で伝わって、くれないんだ 「も……もっと抱けって言ってんだ…………っ!」 「へ………っ」 「俺に遠慮なんかするなっ…!このバカっ…!」 「あいたっ」 気付いた時には涙が溢れていて、心の中で思っていたはずの言葉が口から出ていた 寂しさの味を含む大粒の涙を止めることなく流しながら、俺は体を起こしてアキの頭をゴチンッとグーで叩いてゲンコツをする 「アキは、俺に遠慮しすぎなんだ………っ!」 「し、翔……」 「付き合ってるのに……っ、気ぃ使ってばっか…!」 「……………」 まだずっぷりと挿入中にも関わらず、依然俺の瞳からは涙がぽろぽろと溢れ口からは激しく切ない怒鳴り声 もう目の前のアキの顔を見ることも出来なくて、俺は必死に涙を腕で拭う 俺、そんなにアキに気を遣わせちゃってるのかな…… そんなに、俺にはありのままを見せたくないのかな… アキに頼ってもらえない自分が情けなくて、それを八つ当たりするかのように喚叫した すると今までだんまりだったアキが、やっと口を開いた 「分かった」 「へ………っ?」 「じゃあもうオレ、我慢しない」 ぐるんっと視界が回転し、気付いた時には仰向けでベッドに押し付けられてアキの大きな体に組み敷かれている状態だった 急に部屋が静かになって、俺の中に入っているアキのものが、どくんどくんと脈を打っているのをより鮮明に、よりはっきりと感じる 「ごめんな、オレ、翔に嫌われたくなかったんだ」 「へっ……………?」 「ありのままの自分見せて、嫌われるのが怖かった」 「き、きらわれる…………?」 するとアキが俺の中から一度それを抜き、そして俺の体をまっすぐ自分の方へと向けさせた そしてアキは、ゴツゴツとした手の甲で俺の頬を優しく撫でると眉を下げてそう言う アキが言っている“嫌われる”の意味が分からず首を傾げる俺は、ぱちぱちと大きく瞬きをする お、俺がアキを嫌う…………? こんなにもアキを想っているのに、嫌いになる……? そんなのって…………… 「きらわ、ないよ…………」 「翔…………」 「俺……アキのこと、嫌いになったりしない…」 「………………うん」 あり得ない、そんなこと 俺はそんなことで人を嫌いになったりしないし そもそも男の俺がこうまでして同性相手に股を開いてやってんだ そう簡単に嫌いになってたまるものか アキの頬を手を伸ばすとふんわりと撫で返し、まっすぐにその瞳を見つめて俺は言った 優しくて切ない色をしていたアキの瞳は、次第に鮮やかな色味に戻っていく 「だから、アキの好きなように、していいよ……?」 そして俺は、アキの首に手を掛け引き寄せると むちゅっと自分からアキの薄い唇へキスを贈った この発言が、アキがずっと抑えていたものを解き放つ最大のトリガーになることを この時の俺はまだ知らなかった

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