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両想い
アキとのエッチが終わった
今日はいつもの倍シたので、言うまでもなくいつもの倍疲れた
くたっとなって力の入らない体をしばらく余韻に浸らせる
すごかった………………
アキがあんなに激しくて情熱的でねっとりとしたセックスを何食わぬ顔で繰り出すなんて
もちろん今までも熱烈だったが、今日は比じゃなかった
あいつはやっぱり、爽やかな王子様の皮を被ったケダモノだ
「シーツ取り替えるから、少し起きられるか?」
「あ………ぅ………」
「だっこにしよっか」
「ん…………っ」
後処理をされた後、ぐっちょりと濡れたベッドに平べったくなりながらそう思っているとアキが俺の肩をちょんちょんとつつく
そしてシーツを取り替えるからと言って俺を立たせようとするが、今俺の足腰は砕けて立つことすらままならない状態
それを視線で訴えると、アキは俺の気持ちを察してくれたようでにっこりと微笑みながら俺を抱き上げ優しくソファに運んでくれた
「ほら、飲んで、いっぱい潮出したからカラカラだろ?」
「ん…………ありがと……」
「ちょっと待っててな、すぐシーツ変えるから」
「ん………」
そして冷蔵庫からペットボトルに入ったミネラルウォーターを取り出すと、わざわざストローを差して俺に手渡してくれる
それを両手で受け取りストローにちょこんと口を付けて渇いた体を癒すと、冷たい水が体の中を通っていくような感覚を感じて心地が良かった
それから綺麗にベッドメイクされた愛の巣へと再び抱っこで運ばれた
綺麗になったベッドで今度は俺の体をアキが丁寧に拭き上げていく
汗や色んな体液でべっとりと濡れていた体は、アキによってキスマークだらけのまっさらな体になった
そして良い香りのする薄手のTシャツと下着を着せられ、俺はエッチを始める前の完璧な状態に戻された
「電気消すぞー」
「ん…」
アキも自らの体を大雑把に拭き上げ下着を履くと、俺を抱いてベッドに寝そべる
アキの宣言で薄暗くなった部屋は、オレンジ色の小さな光を温かく灯す
たった1ヶ月でもうすっかり見慣れてしまったその景色を、俺は心愛しく感じながらアキの胸にそっと擦り寄ってみる
「体、辛くないか?」
「ん……意外と、だいじょぶ………かも」
「あはは、そっか、よかった」
「……俺、意外と頑丈」
大きくて温かい手が俺の腰に触れて、すりすりと優しく撫でてくれる
本当はビキビキと痛む体をそうでもない、と隠して返事をするとアキは穏やかな声でそっかと呟く
本気で壊れると思っていた
だけど壊すかも、と言われていたが壊れなかった
自分のこんな細っこい体が意外と丈夫であることが、今日一番のびっくりポイントかもしれない
タオルケットの中でもぞもぞと動き、アキの体にぎゅっと抱き付く
するとアキがんふふと嬉しそうに笑い、俺の頭に頬を擦り寄せてくる
「あのさ………アキ………………」
「ん?」
「実は俺さ、アキが前に足りないって呟いてたの、聞いちゃったんだ………」
「えっ!?」
そんな機嫌の良いアキに、俺は思い切って打ち明けることにした
アキが夜中にボヤいていたこと
夜中にひとりで抜いていたのを知ってしまったこと
そしてそれを、保健室の先生である網走先生に相談に乗ってもらったこと
先生からのアドバイスで、今日の行為に及んだこと
ここ数日間で起こった出来事を、全てアキに打ち明けた
本当はこんなこと打ち明けるなんて恥ずかしかったが、それでもアキに隠し事をするべきじゃないと思った
「そ、そっか………聞いてたんだ……」
「ご、ごめん……盗み聞きしたわけじゃ……」
「ううん、違えの、愚痴みたいに呟いたオレが悪いの」
俺からの告白を聞いたアキは、ごろんと体を45度回転させて真上を向きため息を吐く
そして顔を隠すように左手で目元を覆うと、オレは何て情けないんだと小さく呟いた
だけど、そんな風に思って欲しかったわけじゃない
アキの意思を、俺も汲みたかったことを伝えたかっただけだ
ただアキに、隠し事をしないで打ち明けて欲しいと思っただけ
「恭ちゃんに相談したの?」
「ん………すごい親身になって聞いてくれたよ」
「あ〜〜そっかぁ………翔もかぁ………」
「へっ?」
さっきまで落ち込んでいたような様子のアキ
だが今度は、両手をぐーっと上に伸ばしてそう言うとなぜかクスクス笑い出す
言っている意味がよく分からない俺はアキの方を向いたままこてんと首を傾げ次の言葉を待つ
するとアキが、ぐるんっと再び俺の方に体を向けてにんまりと笑いながら言った
「実はオレもさ、恭ちゃんに相談したんだ」
「へっ」
「んふふ、翔ともっとしたいんだーって言ったの」
「そ、そうだったのか……」
そしてアキの口から告げられる、まさかの事実
どうやら俺たちは、ふたり揃って同じ相手に似たような趣旨の相談を持ちかけていたらしかった
アキは満足できない不満と葛藤を、俺はアキを満足させるための方法を
たった半日の間に、網走先生は俺たちそれぞれから悩み相談を受けていたのだ
先生、アキから相談されたなんて一言も言わなかったな…
そう思いながら何だか先生に上手い具合に誘導されたような気がして、俺はむむっと唇を噛む
だがそんな先生のおかげで俺たちは今日を過ごすことができたので、何も言わないでおこうと思う
「オレたち本当、両想いだな!」
ぼんやりとオレンジ色の明かりが灯る広い部屋
目が慣れて、薄暗くてもアキの表情が割とはっきり読み取れる
そんな薄暗くて心地の良いベッドの中で、アキがにんまりと笑って明るくそう言った
目尻にいっぱいしわを作ってぎゅっと目を細めるアキの笑顔は俺のいちばん好きな顔
そんなアキの頬を優しく撫でると、アキも俺の頬を撫で返してくれた
今日のこの何でもない1日が、俺たちにとってとても大切な1日になったことを、来年の今日も覚えていられたらいいな
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