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名家⑤
『消されるってなんだよ?』
「だから兄がお前の事嫌いらしいから俺との関係を知られて消されない様にって事」
『…………』
何となく高嶺は気付いていたが、九条家の双子は相当なブラコンのようだ。
普通弟の交遊にいちいち干渉するか?
全く、面倒な相手と知り合ったものだと高嶺はため息をついた。
一方蘭は取り敢えず忠告はした。
あとは高嶺が兄に消されない事を祈るだけだと何処か他人事だ。
どちみち、なるようにしかならない。
成り行きに任せるしか無いのかなと半ば投げやりだ。
「うわっ待てユキ!!」
「そこは駄目だって!!」
突如リビングから響いてきた声に何事かと蘭は自室から出てくると、猫のユキを抱き抱えた玲香と消沈した様子の父、碧が目の前に飛び込んできた。
「どうしたの?」
「ユキがね、壁引っ掻いちゃって……」
希一の指差す方に目を向けると壁に爪痕が残されていた。
「ああ、それで父様落ち込んでるのか。
ユキ、爪研ぎならこっちだって」
呑気にユキに語り掛ける蘭とは裏腹に碧はお気に入りの家の壁紙を傷つけされたのがショックのようだ。
だが、可愛い息子が連れ帰った猫に怒ることも出来ずガックリと項垂れる。
「碧さん、元気出して。
また張り替えればいいから」
「ああ………」
希一は碧を励まそうと声を掛ける。
まぁ仕方がない。
蘭が嬉しそうにユキと戯れるから……
仕方がないが、やはり壁紙を傷つけられたのはショックで再びガックリと項垂れた。
こうやって周りは蘭に自覚の無いまま振り回されるのだった。
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