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四、僕の顔はぶさいく 後
寮へ到着する前に旧体育館倉庫に連れ込まれて、久しぶりに暴行を受けることになったからだ。
「北條様の次は如月様に付き纏うなんて、どれだけ面の皮が厚いんだよ」
「まだ自分の立場理解してねぇのか? 頭大丈夫かよ」
「理解できるまで、ここで反省してろ、バーカ」
錆が目立つ鉄扉が軋む音を立てながら閉じられていくのを僕は起き上がることもできずにただ見ていた。外から錠前が掛けられた音が聞こえて、僕は焦った。
「……う、そ…」
必死になって、僕はその鉄扉に向かった。
体を丸めて、ひたすらお腹をかばっていたから内臓は大丈夫なようだったけれど、足首を何度も踏まれた所為で、体を引き摺るだけでも痛さが襲ってきた。
やっとの思いで扉に触れて、両側に開こうと力を入れるけれど、鉄扉はビクともしなかった。
どうしよう。
早く寮に帰って外出届を提出しなければいけないのに。
ここからいつ出してもらえるのか。それが分からなくて僕は愕然とした。
約束を破ったりなんかしたら、きっと柊さんはもう来てくれなくなる。
「お願い! 出して! 誰か、お願い!」
鉄扉をガンガンと拳で叩いた。叫びながら何度も叩いた。
でも、消灯の迫る時間に旧校舎にいる人間なんていなかった。誰一人、僕の声に気付いてくれることはなかった。
「柊さん…」
僕は泣いている場合ではないとは分かりながらも、涙を止められなかった。柊さんに嫌われたくない。その思いでいっぱいだった。
いつの間にか泣き疲れて、寝てしまっていたけれど、寒さで目が醒めた。
カタカタと体が震え、力を入れてもそれは止まらない。その上、足首は熱を持って腫れ、少しでも動かせば痛みが全身に突き抜け、堪らず呻いた。
こんな足じゃ、柊さんと一緒にお出かけできない。
どうしようどうしよう。
そう思っているうちに、寒さも耐えられないほどになってくる。
羽織るものが欲しいのに、そんなものは倉庫にない。もし、あったとしても動くことさえできない。ただコンクリートの床に丸まることしかできなかった。
自分じゃないんじゃないかと思うくらいに息が荒くなってきて、寒さが辛くて呻いてしまう。
頭が朦朧とし始めるなか、僕はうわ言のように柊さんの名前を何度も呼んだ。
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