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「春川〜!」 「んー?」 「見て!クッキーめっちゃ美味そうでは!?」 「おおっ!とても美味そうだ!どれどれ。」 「あっ!まだダメ!!」 クッキーを取ろうとした手をペンッと叩かれ、引っ込める。対して痛くない手を摩りながら、ふくれっ面で琥太郎を見た。 「あはっ!そんな可愛い顔してもダーメッ!」 「ケチ…。」 「あとで一緒に食べるんだから、冷めるまでもう少し待ってて。」 チョイチョイ、と指で俺を呼び、背が低い琥太郎に身長を合わせると、唇にチュッと軽くキスしてくれた。 「我慢が出来る春川、いい子♡」 笑ってそう言うと、パタパタとキッチンへ戻っていく。 「………天使か。天使が見えたぞ今……。」 可愛い恋人に心を打たれながら、大人しくリビングで座って待つ事にした。 「…そういえば、千都世、最近来ないな。」 ふと、千都世の顔が頭に浮かぶ。琥太郎が家に来るようになってから、頻繁に来ていた千都世はめっきり来なくなった。 きっと千都世の事だから、俺たちの時間を邪魔したくなくて控えてるんだろうが…。 「…俺だって、寂しい気持ちくらいあるのに…。」 琥太郎と恋人に戻ってから、一度だけ千都世に会った。琥太郎に話したことを怒って、でもその後にたくさんお礼を言った。 『お前には感謝しても、したりねえ…。本当にありがとうな。』 『春川がそんなお礼言える子だったなんて…!千都世くん、感動!』 『やかましいわ。…あ、あと、前に渡した手紙…もう必要ないから捨てといてくんね?』 『ん、わかった。』 「今度、飯でも奢ってやるか。」 お前ともまた、色々話がしたいからな。

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