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「こたろー。」
「んー?」
「ジャーン!」
「わ、ビデオカメラ?」
ふと、琥太郎と撮りたいなと思って、ビデオカメラを買った。
「そ!これでお前たくさん撮る。」
「えー、どうせなら一緒がいい。」
「わかったわかった、ハイ!なんか言って!」
「えっ!?もう!?」
録音ボタンを押してレンズを向けると、琥太郎は無茶振りに慌てながら、必死に何か喋ろうとする。だが、何を言えばいいのか思い付かないのか、「あー」だの「うー」だの言っていて、俺は思わず吹き出した。
「琥太郎〜っ!ただのビデオカメラだからこれ〜!もう少し落ち着けって!アハハッ!」
「う、うるさいなぁ!春川が急に撮るからだろ!?…一緒がいいって言ったのに。」
「ふふっ、可愛いコタローくんが拗ねてまーす!」
「拗ねてねえ!!」
ギャアギャア騒ぎながら一日中二人で撮ってた。掃除中も、料理中も、琥太郎の入浴剤中にだって突撃して撮ってやった。
元々ビデオカメラを買ったのは深い意味なんてなかったけど、レンズ越しで笑う琥太郎に、自分がいなくなってもこうやって笑ってほしいと思い、いつか自分がいなくなった後に見る琥太郎へ向けて撮る自分がいた。
「ほら、琥太郎なんか喋って!」
「んー?また撮ってんの?春川愛してるぜ♡」
「ンフフッ、てーれーるー♡」
「ほら貸して!次春川の番!」
カメラを取られ、レンズが向けられる。
「春川は、俺のこと愛してるー?」
…琥太郎、いつか俺がいなくなっても、お前はずっと……。
「めっちゃ愛してるね〜!そりゃもう世界一!
俺ね、琥太郎の笑顔すっげえ好きだからさ…ずっと笑ってて、琥太郎!」
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