46 / 47
Memory:46
この日、春川の夢を見た。
三人で歩いてて、海に行った。
夕日を背にしながら春川は、俺たちの手を握らせる。
そして俺の髪をクシャクシャに乱した後。
「琥太郎を、よろしくな。…千都世。」
そう言って笑った。
久しぶりに会った春川は、当たり前だけど三年前と全く同じで、すごく懐かしくて…。
「言われなくても、わかってんだよ…バカ春川。」
堪えきれず、涙を流した。
そんな俺を困ったように笑いながら見るから、ゴシゴシと拭き取って、「じゃあな」って声をかけた。
「………ん、」
目が覚めると、その夢を鮮明に覚えていて。
「…っ、ふぇ……、」
「…こたろ、起きろ。」
泣きながら眠る琥太郎を起こした。
「…ハッ、…あ……?」
ポロポロと溢れる涙に驚きながら、俺を見る。
その涙にソッと触れて、優しく拭き取った。
「お前も会えたか、春川と。」
「………っ、うん…!」
琥太郎は、夢の中の春川を教えてくれた。
俺が見た春川とはまた違って、俺には俺への言葉、琥太郎には琥太郎への言葉を残してくれたようだ。
「よかったな。」
「うん!…ね、千都世…。」
「ん?」
「俺…、この先の人生を、千都世と過ごしていきたい、んだけど……。」
春川が夢に出たのは、これが最初で最後だった。
「…うん、俺も。」
これは、春川が死ぬまでのおはなし。
そして、
琥太郎がもう一度、幸せになるおはなし。
-千都世 of Love 2 : FIN-
ともだちにシェアしよう!