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第165話

いよいよ、できたデモ映像を持っていざ行かん その25 「 お邪魔してるよ、悪いな忙しい時間に手間とらせて 」 「 いやいや、大丈夫ですよ。 ところで今夜のお連れは? 流石に山尾さんだ、また綺麗な人たちを連れてますね 」 そう言いながら僕たちに目を移すその人は、柔らかい微笑みを浮かべているけど何やら背筋がゾワゾワしてくるような圧迫感を抱えた人だった。 「 今日はね、頼みごとがあってきたんだけどね 」 「 頼みごと? 」 「 彼らは 」 と嶺さんが言い淀んだ。 「 彼らは? 」 「 僕の知り合いなんだが 」 「 知り合い? 」 オウムの様に返す言葉に含みがあるようで怖い。 「 ほら、挨拶挨拶 」 と適当に端折った様子の嶺さんに促されて僕らは挨拶をした。 僕らが挨拶をすますと、一応は丁寧にかえす目の前の男がびっくりするような自己紹介をした。 「 私は真山 純。 このクラブの経営を任されてます。 支配人という事でね。 そして、 こういうなりはしているけど 性別は女性 」 「 え? 」 呆然とする僕たちに、 「 驚きました?性同一性障害って、聞いたことがあるでしょう。なにかのTVドラマで取り上げられてから有名になったその障害 」 目の前の男性は、 細身だけど光沢のある濃いグレーのスーツを着こなし、髪の毛は耳がかぶるくらいの長さで、きちんと整えられている。眼は一重だけど切れ長で涼やかな面差し。 なによりもその、落ち着いた声が穏やかで、片側にだけ装われたピアスに 蒼く鋭く輝く石がはめ込まれているのが、ユニセックスな魅惑的な感じを醸し出している。 それでも伝わってくる凍ったようなこの感じ。 彼女の(彼の)裏側は見てはいけないような気がした。

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