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プロローグ

「……うぅ」  息苦しさに耐え切れず、呻き声が零れた。  ――また、だ。  夢うつつの状態で歯噛みする。直後、全身の筋肉が強張り、指先すら動かせなくなった。  金縛りだ。  細く長い縄のようなもので胴から手足をきつく縛められたみたいに、身体が硬直する。  目を覚まそうと思っても、瞼は小さく痙攣するばかりで開くことができない。全身をギリギリと締め上げる力はいよいよ強くなって、声を発するどころか息をするのも難しく、苦痛に悶絶するうちに意識が朦朧となる。  やがて、漆黒に塗り込められた闇の中に、ぼんやりと白い物体が浮かび上がった。  ――あ。  現実の瞼は固く閉じたままだったが、夢の中、驚きのあまり瞠目せずにいられない。  すぐ眼前で、血で染まったかのような赤い目が、こちらをじっと見つめていた。  白く、ぬるりとした鱗の肌に、赤い双眸。閉じた口の隙間から、先の割れた赤い舌が、ちろちろ、ちろちろと出たり入ったりしている。  ――白い……蛇っ?  細い縄だと思っていたものの正体に気づいた瞬間、ゾクッと悪寒が背筋を駆け抜けた。  ただ驚愕し、瞬きを忘れて息を呑む。  やがて白蛇が、ゆっくりと口を開いた。  真っ赤な口の中には、鋭く尖った白い牙。  ――ああ、食われるのか。  頭の片隅で、ぼんやりそんなことを思う。  白蛇はいよいよ僕の身体を強く締めつけ、骨が軋むほどの苦痛を覚えた。  夢だというのに、ひどく苦しくて、意識が朦朧としてくる。  締め上げられた腕を伸ばそうともがくけれど、まるで蝋で固められたみたいに身体が言うことを聞いてくれない。  全身の感覚がだんだんと麻痺していくのを感じながら、虚しく涙を流し、息を喘がせる。  目の前には、毒を滴らせる白い牙と、赤い口。舞い踊るように揺れる、先割れの舌。  このまま、死んでしまうのか?  ――恋も、知らずに……。  いよいよ目の前に真っ赤な大きな口が迫り、僕はひと口で呑み込まれてしまった――。

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