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とりあえず調べてみようかな、と思って放課後の空いた時間にクラスの資料を開き、圭のページを見てみる。
本来なら4月の時点で見ておくべきものなのだが、めんどくさいからという理由でさらっと目を通しただけで放置してしまっていた。
中学時代の圭ははとても静かでおとなしい子だったらしい。明るくてクラスの中心にいる今からは考えられない。
でも俺が気になったのはそこじゃなかった。
家族構成の欄。
……あいつの親死んでたのかよ。
圭の両親は三年前に他界しており、親権は伯母にあるという内容だった。中学までは伯母の子供と4人暮らしだったらしい。しかしその伯母夫婦は海外に居ることが多く、事実上は二人暮らしだった。それが高校進学をきっかけに引っ越してきたみたいだ。
……ならあの傷は従兄弟にやられてたのか?
圭の従兄弟(今は兄弟になっているが)は結構有名な難関大の大学生だった。
そういえば、以前圭の家に行ったときに家具が何もなかったのは引っ越してきたばかりだったからなんだろうか?
あのときは邪魔になると思って早く帰ったけど、お粥くらい作ってあげれば良かったかもしれない。具合が悪いのに誰もいない部屋に一人は寂しかっただろう。知らなかったとはいえ熱があったのに悪いことしたなぁと思う。
一通り資料を読んでみたが特に虐待をほのめかすような記述はなく友人関係も家族関係も良好だったらしい。これが本当かどうか疑わしいがまあ、少なくとも中学の先生は知らなかったのだろう。
やっぱり本人から聞かないと詳しいことはわからないな。あー、でもその本人が話したがらないんだよな。まぁ話したくない気持ちはわからなくもないが。
どうしたものか、とまた振り出しに戻ってしまう。
「沖田先生!」
急に名前を呼ばれ、はいと返事をして振り返ると授業を持ってる3年生の生徒達だった。
「何?質問?」
「今日は違いまーす。課題、持ってきました。えっと、ここでいいですか?」
「あー、そこおいといて」
「はーい。あ、先生今週暇でしょ。バスケの応援に来てくださいよー。」
「あー、そういえば今週総体だったな。でも悪い。テスト作成しなきゃいけないからどこも見にいけないわ」
「えー、残念。先生来たら皆やる気になるのに 笑笑」
「悪いな。でもお前ら強いだろ。次の試合は多分見に行けるから、勝ってきなよ」
「ほんと?じゃあ絶対ですよ」
「はいはい。ほらもう部活行け」
「はーい。」
「バイバイせんせー」
うん。まぁ悩んでても仕方ない。
一旦保留として、課題の点検でもやろう。
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