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第68話
「はぁ······ん、ぅ······偉成······」
「ん、どうした。」
「······俺、もう疲れた。お風呂入って、寝たい······。」
「そうだな、風呂に入ろうか。」
着けたばかりの首輪が会長の手によって外される。力の抜けた体じゃ動けなくて、会長に抱っこされ風呂場に連れて行かれた。
「一緒に入るか」
「えっ!それは恥ずかしいからダメ!」
「恥ずかしくないだろ。ほら、脱げ。」
結局俺はオメガだからアルファの言うことに従っちゃう。服を脱いで何故か一緒に風呂に入る。
ここの部屋に入った時から思っていたけれど、広過ぎないか?
お風呂も、2人で入ってもまだ余裕がある。
「あっ!そう言えば着替え······」
「そうだ。お前の服は買ってある。後で見せてやるから兎に角落ち着いて風呂に入れ。滑って転ぶぞ。」
「子供じゃないんだから······っわ!」
反論したのに、ツルッとした床で滑って転げそうになった。それを会長が受け止めてくれる。
「ほら、落ち着いて風呂に入れ。」
「······すみませんでした。」
髪と体を洗って、会長と一緒に湯船に浸かる。
さっきから何度もチラチラと会長の体を見てるけど、何て素晴らしい筋肉なんだろう。
アルファはそんな所も違うのかと思う。確か、高良先輩も筋肉が格好良かった。
「さっきから何でそんなにチラチラと見てるんだ。」
「っ!気付いてたんですか!」
「そりゃあそんなに見られると気付く。何だ、抱いて欲しいとでも思ったか。」
「ばっ、バカじゃないですか!?」
「俺は馬鹿じゃないぞ。」
真面目に返してくるな!なんてことは言えずに、ぶくぶくと目の下まで湯船に浸かる。
「千紘は匡と仲が良かったな。普段のあいつはどうだ。」
「······仲悪いんですか?匡から会長の話は聞いたことがなかった。」
「あいつが俺を嫌ってるんだ。悲しいがな。」
本当に悲しそうな顔をするから、慰めてあげるべきなんだろうと思って、会長に近づく。
「あの······あのね、俺も今友達を怒らせちゃってて······でも多分、それは勘違いから起こったことなんです。だから······匡もきっと勘違いしてるんです。」
「······慰めてるのか?」
「あ······はい。一応」
正直にそう言うと会長は鼻で笑って、馬鹿にしたくせに俺の頭を撫でて「ありがとう」って言った。
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