69 / 876

第69話

お風呂から上がって体を肌触りのいいタオルで拭き、髪を乾かす。 「千紘」 「何ですか······ああ、それ。」 名前を呼ばれ会長を振り返ると、その手には首輪が。さっきまで着けていた首輪はもうとっくに捨てられたし、それしか着けるものが無いから特に抵抗もなく自分で着けようとしたのに、会長がわざわざ俺の首にそれを着けてきた。 「うん、やっぱりよく似合ってる。」 「なっ······!」 好きじゃない相手でも、物をもらって褒められるとドキドキする。この感覚は嫌じゃない。 「さあ、歯を磨いて寝よう。」 「俺はどこで寝るんですか?」 「うん?同じ部屋で寝るぞ。」 「······同じ部屋?」 寝室を案内され、部屋に入るとそこには大きなベッドが1つ。 1つ······? 「さあ寝るぞ」 「はっ!?会長と同じベッドで寝るんですか!?」 「ああ。何か問題か?運命の番なんだ。それくらい構わんだろう。」 「か、構わなくない!だってそんなの······恥ずかしいっ!」 そう言ってベッドから離れると、会長に手を掴まれてそのままベッドに引きずり込まれる。 「寝ろ。」 「っ!」 会長に抱きしめられて、大好きな匂いが思考回路を融かしていく。 「ん······会長、頭くらくらする······」 「ああ、俺も。お前の匂いは俺をおかしくするんだ。」 離れたくなくなる。 このまま1つになってしまってもいいと思ってしまう。 「おやすみ」 「······おやすみなさい。」 抱きしめられたまま、目を閉じる。 酷く穏やかな気持ち。こんなの久しぶりだ。 これが運命の番なんだと、身に沁みて感じた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!