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甘い匂い

スゥスゥと眠りに落ちた宮間。 匂いも落ち着いて、今のうちに運ぼうとそっと抱き上げる。 仮眠室から出ると井上は居なくなっていた。そりゃああんな強烈なフェロモンを撒き散らされちゃ堪らないだろう。 「帰る?荷物俺が持っていくよ」 「あー……いや、いいよ」 松舞が俺と宮間のバッグを手に持ってくれたけれど、それは断った。 松舞まで連れて行けば今日の生徒会は赤目だけになって、やらないといけない事が終わらないだろうし。 「じゃあ届け出しておく!心配せずに休んでね!」 「ありがとう」 バッグを受け取り、建物に向かう。 薬が効いて症状も治まっているとしても、顔を見られるのは嫌だろうから、なるべく見られないように顔を俺の胸の方に向けて歩く。 「重い」 オメガで小柄でも、意識のない男子高校生を運ぶのはやっぱり重くて建物までが遠く思う。 ゆっくり歩いて漸く建物に着いた頃には少し息が上がっていた。 空いている部屋に入ってベッドに宮間を寝かせ、俺はごくごくと水を飲む。 「んー……先輩ぃ……」 声が聞こえて傍に寄る。 涙目でじっとみてくるから目に毒だ。 「水飲め」 「……ぁ、飲ませて……」 体を動かすのも怠いみたいで、ペットボトルを片手に宮間を座らせて背中を支え、口元に飲み口を持っていく。 「先輩……ごめんね」 「……何が」 「手間かけさせて……。まだ大丈夫やと思って、事前に薬も飲んでなかったから……」 「そんなこと気にしなくていい。」 ペットボトルの蓋を閉め、頭を撫でてやると宮間の喉がクゥと鳴った。犬みたいだ。 「体辛いか?」 「ん……触って……」 「……今は俺も薬が効いてるから止められるけど、これが切れたらお前の体を気遣ってやれないと思う。それに……項を噛もうとするはずだ。それでもいいか」 宮間の項を噛んで番になり、これから一緒に人生を歩いていく覚悟が俺にはある。 けれど宮間にはあるかわからない。 「いいよ、噛んでいいから、触って……」 「……今週はもう薬は飲ませない」 薬を飲めば発情は治まる。 今までは一週間飲み続けて耐えていたんだろうけど、番になるならもう薬は飲む必要は無い。 「服脱がせるぞ」 薬が効いていてお互いに理性はある。 服を脱がせると服に着いたフェロモンが香って頭がクラっとした。 これは、薬が切れた時が怖いな。

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