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だってあんたは

朝日がカーテンの隙間から漏れている。 それをぼんやり眺めたあと、天井を見て溜息を吐いた。 いや、こんなんしてる場合じゃないやろ。 早く幸鷹への誕生日プレゼントを決めないといけないのに。 昨日は何が好きなのかを聞き出そうとして失敗に終わった。 幸鷹はほんまに、一体何が欲しいんやろう。 お互い裸のまま体を密着させている。 隣で眠る幸鷹はあまりにも顔が整っていて、高く小さな鼻に噛み付いてやりたい。 昨日はセックス自体は激しくなかったと思う。でもあれだけ感じて意識失ったってことは激しかったんかな。 「幸鷹」 時刻は七時前。 俺も幸鷹もそれぞれ、学校と会社に行く準備をしないといけない。 「起きて」 肩をユサユサ揺らせば、嫌そうに薄目を開ける。 目が合うと抱き寄せられて、苦しさに「うぅ」と呻いた。 「お風呂入りたいから離して」 「……今何時」 「もうちょっとで七時」 胸をとんとんと叩き「お風呂」ともう一度言うと、上体を起こした幸鷹につられて俺も体を起こす。 「昨日覚えてるか?お前」 「まあ、最初の方は。気持ちよすぎて体がおかしくなったんかと思った……」 「俺も気持ちよかった。体もだけど、精神的にも満たされたわ。」 「あ、そう?俺もな、なんか包まれてる感じがしてよかった。」 幸鷹の腕に収まって話をしていると、七時になって抱っこされたまま風呂場に連れて行かれた。 *** 朝ご飯を食べ学校に着いて、またスマートフォンと睨めっこする。 昨日絞ったプレゼント候補を見るけれど、何かどれも違う気がして……。 もう潔く本人に聞こうかな。 何が好き?何が欲しい?そう聞いた方が間違いもないよな。 授業を聞き、生徒会に参加。それが終わると連絡をして幸鷹に迎えに来てもらう。 今日も同じようにして迎えに来てもらい、車内で意を決して「なあなあ」と話しかけた。 「何」 「欲しい物無い?」 「無いな」 「……明後日誕生日やろ?何かプレゼントしたい」 「プレゼントなあ」 それから幸鷹はずっと考えてくれたけど、思いつかなかったみたいで、教えてもらえずに帰宅した。 「考えたけど俺何も要らない。」 食事中、そう言ってきた幸鷹にムッとした。 いつも俺ばかり与えられて、俺は何もあげれてない。 俺だって一応金持ち一家の息子やねんけど、ほんまにそうやったっけって自信無くすくらい。 「純?」 「自信無くした」 「は?何の?てか何で?」 幸鷹の心底不思議そうな表情にもムッとしてしまう。

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