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発情期のある日
体がだるくて動くのが億劫だ。
彰仁君は俺の背中に胸をくっつけて、離れないと言わんばかりに抱き締めて眠っている。
「ん、あきよしくーん……」
けれど喉が渇いて仕方がない。
お風呂にも入りたい。
胸の前にある彼の腕をトントンと軽く叩いて声を掛けて、漸く後ろで彰仁君が小さく声を漏らした。
「んー……」
「ぁ、ちょ……っ」
抱き締める力が強くなって少し苦しい。
首筋に熱い息がかかって擽ったい。
「よいしょ、っと……」
何とかその腕を剥がして彼から離れ、フラフラな体にムチを打って飲み物を飲みに冷蔵庫まで歩く。ひとくち飲んだ後に風呂場に行って準備をした。
飲み物を飲みに戻って、浴槽の半分くらいまでお湯が溜まったところでようやくお風呂に入る。
まだ彰仁君は起きない。
「あったかーい……」
湯船に浸かるとそこは天国だった。
このまま眠ってしまいそう。いやいや、と首を振って自分の爪先を眺める。
明日からは仕事だ。長い間休ませてもらったからいっぱい働かないと。
きっと暫くはこの一週間のせいで彰仁君も忙しいんだろうな。
ぼんやりと明日からのことを考えていると、外がうるさくなった。
バタバタ、激しい足音に彰仁君が起きたのがわかる。
「彰仁くーん」
大きな声で名前を呼べば、お風呂場のドアが騒がしい音を立てて開く。
そこには下着姿で寝癖のまま目を見開く彼が。
「優一さんっ!」
「おはよぉ。」
「何で勝手にベッドから出てるんだ!」
「喉乾いてね。お風呂も入りたかったし。あ、彰仁君も入ろうよ。」
普段の姿からは想像もできないくらいだらしの無い、そして焦っているような彼だけれど、俺だけが見れる姿なのでただただ愛らしい。
彼は唇を尖らせながらお風呂に入ってきて、寝ていた時のようにまた俺を抱きしめる。
「優一さんが一人で動けるなんて……なんか俺はショック。」
「えー?歩くの大変だったよ?」
「発情期明けは頼られたいのに」
「いつも頼りにしてるよ」
年下の、けれど頼りになる俺の番は、今日は珍しくとても可愛らしくて、時々はこんな姿も見たいなと思ったけれど、口にはせずにバレないように静かに笑う。
だって彼は存外拗ねやすいので。
発情期のある日 了
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