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第1話※
激しい痛みに眩暈がした。全身の至るところを斬られていて、もはやどこから出血しているかもわからなかった。指先が冷たくかじかみ、武器を握っているのもやっとの状態である。
「はぁっ……はっ……」
肩で息をしながら、アクセルは顔を上げた。
すらりとした長身の男性が、微笑みながらこちらを見つめていた。柔らかな金髪が優雅に風に揺れている。白い上着には乱れた箇所はひとつもなく、今現在戦闘中の人物とは思えない。
右手に握られた太刀を下に軽く振ったら、地面に鮮血が勢いよく散った。あれも全てアクセルの血だ。
「ふふ、もう限界かな?」
にこりと笑い、艶やかな唇から言葉を紡ぐ。
「せっかくの『死合い』なのに、これで終わりなのはもったいないね。もう少し楽しみたかったのにな」
「兄上……」
腹の底から活力が沸き起こってきて、アクセルはもう一度武器を構えた。
そうだ、俺だってまだ倒れたくない。もっと戦っていたい。
戦っている時だけは――今この瞬間だけは、兄は自分を見ていてくれる。自分だけを見て、自分だけを斬って、自分だけに話しかけてくれる。
これは誰にも邪魔されない二人だけの時間。アクセルにとっては至福の一時だった。
もっと俺を見て欲しい。もっと、もっと。
「く……くく……ははは……!」
衝動が抑えられず、アクセルは兄に突進していった。両手の小太刀を振りかぶり、敬愛する兄に斬りかかる。
身体が軽い。痛みも感じない。全身の血が沸騰するように滾り、背筋がぞくぞくするほどの快感がこみ上げてくる。『死合 い』でこんなに気持ちよくなれるなんて、初めての経験だ。
今なら兄に勝てるかもしれない。尊い身体に傷をつけられるかもしれない……!
「たあぁぁぁあ!」
ガキン、と金属がぶつかり合った。夢中で振り下ろした二刀小太刀は、いとも簡単に受け止められてしまった。
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