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第2話※(アクセル~フレイン視点)
驚愕に目を見開いていると、やや呆れた顔の兄に窘められる。
「……なんて顔をしてるの。はしたないよ、アクセル」
「……!?」
「まあ、気持ちはわかるけど」
次の瞬間、胸に焼けつくような衝撃を感じた。
「ぐっ……!」
顎を跳ね上げて仰け反ると同時に、唇から鉄の味が迸る。自分の胸元から兄の愛刀が生えているのが見えた。
斬ったつもりだったのに、防がれた挙句斬られてしまったのか……。
「兄上……」
縋りつくように兄に手を伸ばした。自分の武器がどこに行ったのか、アクセルにはもう見えなかった。
見えるのは傷一つない兄の顔だけ。俺の返り血を浴びて真っ赤に染まっている兄の姿だけ……。
「俺は、まだ……あなたに……届かない……のか……」
その呟きを最期に、アクセルは力を失った。
狂おしいほどの愛しさとほんの少しの悔しさを抱きながら、白い闇へと堕ちていった。
◆◆◆
「……いや、届いていたよ」
傾いていく弟の身体を、フレインは片手で受け止めた。
胸部に突き刺さっている太刀を引き抜いたら、夥しい量の血液が飛んだ。それでまた自分の上着が汚れた。白い生地だから、血の汚れは特に目立つ。
「ヴァルハラ に来たばかりの時は掠り傷すら負わせることができなかったのに、ね……」
そう呟きながら、空いている手を背中に回して刺さった小太刀を引っ張った。弟の手から離れた獲物は、弾かれた衝撃でフレインの肩甲骨を貫いていたようだ。
「……強くなったね、アクセル。この短い期間に随分腕を上げたものだ」
半眼で息絶えている弟のまぶたに、そっと手をかざす。眼が開いたままの死体はあまり好きではないのだ。
まだ温かい弟の亡骸を眺めていたら、何か妙な感情がこみ上げてきた。なるべく綺麗に殺してあげるつもりだったのに、なかなか思うようにはいかないものだ。
それもこれも、弟の実力が上がってきたからなのか……。
『アクセル、戦闘不能。死体を回収し、蘇生を行ってください』
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