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第46話
「お兄さん、隣空いてる? ちょっとぼくとお話しよ」
「あ、ああ……かまわないが……」
「へへ、やったね」
少年は遠慮なくアクセルの隣に座り込み、嬉しそうにニィッと笑った。
可愛いな、と思った。大きくくりっとした目はお人形みたいだし、髪も子供らしいショートボブである。
自分に弟がいたらこんな感じだったかもしれない。兄の気持ちがちょっとわかった。
「あー……じゃ、オレはあっち行ってるわ~……」
何故かチェイニーは逃げるようにその場を離れていってしまった。お喋り好きのチェイニーにしては珍しい。こういう子供は苦手なんだろうか。
少年は全く気にせず、こちらを見上げながら言った。
「お兄さん、アクセルだよね? 最近話題になってるよ」
「話題?」
「四ヶ月で五〇位以内に上がったって。すごいスピード出世だね」
「まあ、それはな……。かなり鍛錬したし」
「すごいね。じゃあ『狂戦士 』にもなれるんだ?」
「あ、いや……それはまだ……」
言われて初めて気づいた。
上位ランカーならほとんど身につけている特殊スキル・狂戦士 モード。身体が軽くなり、痛みに怯まなくなり、体力・腕力・脚力・動体視力等が飛躍的に向上するのだ。
アクセルはまだきちんと身につけていないが、これ以上のランクアップを目指すなら必ず修得しておかなければならない。
――でもそんなの、どうやって修得すればいいんだ……?
普通に鍛錬するだけで身につくとは思えない。兄なら狂戦士になれるはずだから、ノウハウを聞いてみようか。
アクセルはちらっと少年を見た。彼は自分の皿に盛られたイノシシのシチューを、美味しそうに口に運んでいた。
こんな子供が「狂戦士モード」のコツなんて知ってるわけないしな……。
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