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第48話※

 ――本当に大丈夫なのかな、この子……。  いざとなったら俺が守ってやらないと……と思いつつ、アクセルは小太刀の柄を握り締めた。これでいつでも抜刀できる。 「皆々様! 今宵はわたくしユーベルの(つるぎ)の舞をとくとご覧あれ!」  芝居がかったお辞儀をし、ユーベルが銀色のリボンのようなものを取り出した。海外の踊り子が小道具として使うようなリボンである。  ――なんだ、あの武器……?  あれじゃ何も斬れなさそうだが……と思っていると、宴の空気に緊張が走った。  その場にいた戦士たちが全員身構え、雑談の声も聞こえなくなる。  ユーベルが動いた。リボンを持った腕を振り上げ、軽くステップを踏みながら振り下ろす。それと一緒にリボンも華麗に舞い、周りのテーブルや食器に触れていく。 「っ……!?」  リボンが触れた食器が真っ二つに割れた。テーブルにも切り傷がつき、床にも刃物を叩きつけたような傷がついた。  ――違う、これは……!  踊り子のリボンではなかった。リボンのように薄く鍛鉄した剣だった。鞭みたいにしなやかに動き、少し手首を返すだけで剣の軌道が一変する。その軌道上にいた戦士たちは、ことごとく斬られるか死ぬかしていた。  ユーベルの舞が始まった途端、穏やかな宴が血みどろの惨劇へとすり替わった。 「さあ、まだまだ行きますよ!」  ユーベルが嬉々としてこちらに迫ってくる。煌びやかな衣装を纏いながら、剣の鞭を振り回してくる。血飛沫が舞ってもその姿には一切の汚れがなかった。  こんなに優雅に美しく周りを斬っていくのは、兄・フレイン以外に初めてかもしれない。  ――確かにこれは、スリル満点の宴だな……!  太刀筋が不規則で全く読めない。  鞭のように唸りを上げ、縦横無尽に周囲を巻き込み、触れたものを片っ端から斬り刻んでいく。自分が斬られないように回避するだけで精一杯だった。動きを読み切れなかった参加者が、次々斬られていくのが横目で見える。 「さあ、生き残っている方は共に踊りましょう!」

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