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第49話

 ユーベルのステップが早くなっていく。目と鼻の先を刃が通過していき、長めの前髪がスパッと切れた。  こうなったら仕方がない。アクセルはあえてユーベルの間合いに踏み込むと、小太刀を抜き放って薄い剣を弾き上げた。ユーベルの剣は軌道が逸れ、誰もいない背後のテーブルを叩き切った。 「おお、ダンス勝負ですね! 受けて立ちましょう!」  興奮気味に笑うと、ユーベルは片脚を軸に回転し始めた。それに伴い、薄い剣もユーベルの周りを丸く覆い始める。銀色の円盤を何重にも纏っているように見えた。  ――まずい……!  少しでも触れたらザックリやられる。遠心力がついている分、普通の状態より切れ味が鋭い。  アクセルは二振りの小太刀でなんとか防御しながら、ユーベルと距離を取ろうとした。が、ユーベルは回転しながらこちらに寄って来て、どんどん距離を詰められてしまう。  上手く角度をつけて剣の輪を逸らし続けたが、既に小太刀にはかなりの刃こぼれがついている。真正面から受け止めたらポッキリ折られてしまいそうだ。 「くっ……!」  何度目かの防御で、小太刀の先が欠けてしまった。武器を折られたらアクセルに為す術はない。反撃も防御もできないのなら逃げるしかない。回転する空気だけでこちらが斬られそうだ。  とうとう壁際に追い込まれ、右か左かで身構えた瞬間、金髪の青年が間に割り込んできた。彼はユーベルの回転を上手く利用し、薄い武器を自らの太刀に巻き付けて弾き上げた。 「楽しんでる?」 「兄上!」  兄・フレインはにっこり微笑むと、アクセルを目で誘ってきた。 「ほら、もっと近づいて。逃げてばかりじゃ面白くないよ」 「そんなこと言われてもな……っ!」  兄上は慣れてるだろうけど、俺は「剣の舞」初体験なんだよ!  ……と、内心で怒鳴りつつ、アクセルはもう一振りの小太刀を構えた。兄に挑発されてしまったら、背を向けて逃げるわけにもいくまい。 「素晴らしい! あなたも共に踊りましょう!」  息一つ乱さず、ユーベルが回転を速める。この人、目を回さないのかと若干不思議になった。

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