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第189話
「あ、もちろんそうする前にできることは全部やるよ? どうにかして復活させる方法はないか、死に物狂いで探しまくると思う。それでもダメだったらヴァルハラを出る。お前を失ってもなお平気で生きていけるほど、私は強くないからね……」
「兄上……」
意外な言葉だった。兄だったら――弟を失った直後はひどく悲しむだろうが――いつか立ち直って、今までと同じように生きていくだろうと思っていたのだ。後を追いかけるような真似をする人ではないと思っていた。
目を丸くしていたら、兄に小さく笑われた。
「何その顔。私がこんなこと言うのはおかしい?」
「おかしいというか、ちょっと意外だったというか……。兄上は、俺と離れていてもたくましく生きていけるタイプだと思ってたから……」
「そうでもないよ。いつもは割とヘラヘラしてるけど、お前が目の前で死んだら卒倒しちゃうかも」
「? 死合いで死んだことは何度かあるが……?」
「そういうのじゃなくて、プライベートとか、生前とかさ。お前と違って、私はお前が死ぬのを見たことがないからね」
「あ……」
考えてみれば、死合い以外でアクセルは死んだことがない。いつも死ぬ寸前のところで兄が来てくれるから、何だかんだでずっと命拾いしてきた。
その代わり、兄の死は何度か目の当たりにしている。生前、瀕死の兄を看取ったこともあるし、訓練中に誤って兄を殺してしまったこともあった。
そういう意味では、アクセルはいつも見送る側なのだ……。
兄がにこりと微笑んでくる。
「私よりお前の方がずっとたくましいよ。私がいなくなっても、一生懸命努力してヴァルハラに招かれるくらいの実力を身につけたんだから」
「……それは、兄上がヴァルハラで待っていてくれると思ったからだよ。そうじゃなかったら、俺もすぐに兄上の後を追っていた。兄上がいない世界に興味はなかったから……」
「ありゃ、そうなの? それでも頑張ってたんだからお前は偉いよ」
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