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第188話

 ――そうだな……あまり兄上を心配させるのもよくないか……。  心配性だなと思わんでもなかったが、兄の気持ちは痛いほどわかる。アクセルだって、兄が危険な任務に赴くことになったら、不安でいても立ってもいられなくなるだろう。一緒についていきたいと思ってしまうだろう。  兄は強いし、自分と違って世渡りも上手だから騙されて罠にかかることは滅多になさそうだけど、それでも全く心配にならないわけではない。  そう考えると、兄の目から見た弟は「世間知らずでいつ騙されてもおかしくない純粋な子供」なのだ。やることなすこと全てが危なっかしく、心配でたまらなくなるのだ。  現に、お人好しが災いして無用なトラブルに巻き込まれたことも何度かある。今のところピンチになったらいつも兄が現れて助けてくれるけど、兄の言う通り彼の身体はひとつしかないし、危機察知能力もない。毎回助けてくれるとは限らない。  ならばせめて自分は兄の手を煩わせないよう、もっとたくましく生きなければ……。 「大丈夫だよ、兄上。もう危ないことはしないから」  そう言って、やんわりと両手を外させる。そしてテーブルに戻り、食事を続けることにした。 「それにしても、『お前がいなくなったら……』って、何を言うつもりだったんだ?」  話の流れで、冗談交じりに聞いてみる。さっき言い淀んでいた部分が少し気になったのだ。  すると兄はサラッとこんなことを言い出した。 「ああ、それ? 聞かなくてもわかるでしょ。お前がいなくなったら、私はヴァルハラを出るよ」 「……ヴァルハラを出る? どういう意味だ?」 「平たく言えば、お前を追いかけて死者の国に行くってことかな。お前がいないんじゃ、ヴァルハラにいてもしょうがないからね」 「え……?」

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