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第191話

 もっと絵本や小説を入れてくれれば暇つぶしにもなるだろうが、ヴァルハラの戦士にとっては「図書館で本を読むこと」より「山に狩りに行くこと」の方が遥かに楽しい娯楽なのである。道理で、いつまで経っても娯楽系の本が増えないわけだ。  しかし、諸事情で狩りに行けないこともあるだろうから、「もっと娯楽系の本を増やしてくれ」と要望を出してもいいかもしれない。 「おや、ラブラブ兄弟ではありませんか。こんなところで奇遇ですね」  不意に声をかけられ、アクセルは本から顔を上げた。兄の友人であるユーベルが、一冊の本を抱えてこちらを見下ろしていた。相変わらずファッションセンス抜群で、今日はヘアスタイルにもこだわっているみたいだ。 「やあユーベル。私の死合い、見てくれた?」 「ええ、観戦させていただきました。相手がランゴバルトだったせいでしょうが、苛烈でしたねぇ」 「まあね。でも本気で戦えて楽しかったよ。そのうち、きみとも本気で死合ってみたいものだ」 「ええ、わたくしもです。あなたとなら華麗に舞えるでしょうね」  友人同士、親しげに話している二人。  嫉妬はしなかったけれど、少し羨ましいなと思った。アクセルには、お互いに切磋琢磨するような好敵手がいない。同期のチェイニーは気のいい友人だけど、彼はこれ以上ランクを上げるつもりがないらしいので、好敵手とは少し違うかなと思う。  今までは兄に追いつくことを目標に一人で黙々と鍛錬し続けてきたけれど、ライバルがいればもっと早く強くなれたかもしれない。 「ところで、その本はなんだい?」 「ああ、これですか?」  と、ユーベルが自慢げに本を見せつけてくる。タイトルはなんと「ユーベルの華麗な美容理論」だった。 「わたくしが書き下ろした本ですよ。ここの図書館はこういった本が非常に少ないですからね。ならば自分で書いてしまおうと思ったわけです」

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