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第456話

「バルドル様は綺麗で優しくて、誰にでも愛される素敵な神だろう? しかもオーディン様の直系の息子という血統書付き。一方、ロキはオーディン様と義兄弟の契りを結んだとはいえ、もともとは神でも何でもない巨人族だからね。バルドル様に嫉妬したんじゃないの?」 「そ……そんな理由で!?」 「本当はどうかわからないよ。でも彼のこじれた性格を考えると、さもありなんって感じかな」 「じゃあ、兄上が殺されたのも……」 「えっ? 私、そんなことお前に言ったっけ?」 「いや、その……さっき目覚める前に昔の夢を見て、それで……」 「ああ、そうなの? 変な夢を見たものだねぇ……」  どうせなら夢くらい楽しいものを見たいのに、と兄が笑ってくる。そしてあっけらかんと語ってくれた。 「私を殺したのは、オーディン様の戦士を増やすためって言ってたよ。オーディン様はラグナロクに備えるため、生きている強者をわざと殺してエインヘリヤルにすることもあったから。だからロキもそれを手伝っていたんじゃないかな」 「それは……。だけど、それならわざわざ俺に化けなくたって」 「まあそこは、性格悪いなと思ったよ。ヴァルハラにいるならともかく、私がお前のこと斬れるわけないのに。丸腰の状態で一方的に斬られるようなものだよね」 「…………」 「でも、今となっちゃロキには感謝してるんだ。若くて綺麗なうちにヴァルハラに行けたからさ。どうせエインヘリヤルとして生きるなら、シワシワの老人よりピチピチの若者の方がいいじゃない?」  兄はこちらを振り返ってニコッと笑った。そしてこんなことを言い出した。 「お前も、歳を取ったお兄ちゃんより、若いお兄ちゃんに抱かれる方がいいよね?」 「えっ!? いや、そんな……俺にとってはどちらも同じ兄上だし……って、そういうことじゃなくて!」

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