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第455話
「バルドル様にも、数え切れないくらい世話になった。人質だった俺を客人としてもてなしてくれて、やりたいことは何でもやらせてくれた。バルドル様の元にいたから、ヴァルハラから離れても楽しく過ごせたんだ。だから……」
真っ直ぐ兄の顔を見て、一生懸命訴える。
「早く地上に戻らなきゃいけないのはわかる。わかるが、せめてその前に一目でも会えないだろうか……。このまま別れてしまったら、俺は絶対に後悔する。今までの感謝と謝罪を述べなければ、俺は……」
「……そっか」
兄はちょっと眉尻を下げて苦笑すると、マントを翻して踵を返した。そして言った。
「じゃあしょうがない……。ちょっと大変だけど、バルドル様を捜そうか。気配を辿っていけば何とかなるかな」
「ああ……ありがとう、兄上」
「でも私はバルドル様の気配はよくわからない。お前が自力で捜しなさい」
「わかった」
早速アクセルは目を閉じ、情報を遮断して集中力を高めた。
――バルドル様の気配……バルドル様の気配……。
彼は明るくて穏やかな優しい神だった。朗らかでふわふわしており、自分にも親しげに話しかけてくれたものだ。
光の神にふさわしく、離れていても周りをぱあっと明るくしてくれるような、そんな雰囲気があった。
となると……。
「……こっちか?」
何となく明るい気配を察知し、アクセルはそちらに足を向けた。
ほとんど勘のようなものだったが、近づくにつれて徐々に気配が強くなってきた。すぐ側にはもうひとつ違う者の気配を感じる。こっちはホズかもしれない。
「そう言えば……」
ふと疑問に思い、アクセルは兄に話しかけた。
「さっき兄上、ロキは最初からバルドル様を狙ってたって言ってたじゃないか。何故なんだ? あんなに優しくていい神様を、どうして……」
「んー……私はロキじゃないから、彼の気持ちはわからないけどね。でも推測はできる」
「どういう?」
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