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第830話

「くっ……!」  斬撃を避けた途端、周囲の細かな瓦礫が顔に飛んできた。破壊された壁や天井が崩れ、風圧で飛ばされて四方八方から襲ってくる。  それに怯んだ途端、今度は前髪ごと額が切れた。額から流血し、危うく目に入りそうになる。  ――こんなんどうすりゃいいんだよ……!  やむを得ず、アクセルは攻撃を受けないギリギリのところまで避難した。  遠目から見るユーベルたちは、まるで巨大な竜巻のようだった。鋭い空気を纏い、移動するだけで周囲のものを破壊し、それに巻き込まれた連中はことごとく死んでいる。そうでなくても四肢を飛ばされたり武器を破壊されたりと、戦闘不能になっている者が多かった。明らかに前回の舞よりも過激で凶悪だった。  ましてや今回は五人の仲間を連れてきている。これでは手も足も出ない。  ――いや、待てよ……?  ユーベルたちの動きをよく観察して、何となく気付いたことがある。  ユーベルの動きは相変わらず変幻自在だが、他の五人はユーベルの動きをその場で真似ているように見えた。あらかじめ動きを合わせて練習してきたのではなく、ユーベルのアドリブに即座に対応し、すぐさま同じ動きをできるよう訓練されているようだった。  だから皆、ユーベルの攻撃よりほんの少し遅れて攻撃を出している。  ――そうか……!  アクセルは思い切って間合いの内側に踏み込んだ。  六人の同時攻撃は確かに厄介だが、ユーベルの動きさえしっかり見ていれば、他の五人の動きは予測できる。五人の攻撃をかいくぐりつつ、ユーベルの懐に飛び込めば活路は開けるはず……!  五人の斬撃の軌道を二振りの小太刀で反らせ、中心にいるユーベルに斬りかかる。 「っ……!」  中心の風圧が凄い。斬りかかる最中にも鉄のリボンに邪魔されて、思ったよりずっと浅い一撃しか入れられなかった。本当はユーベルの胴を切断できるはずだったのに、上着一枚を切っただけで終わってしまう。

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