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第831話※

「おお、わたくしへの挑戦状ですか? 面白い、受けて立ちましょう!」  ユーベルが嬉々として武器を振り回す。風の刃が分厚くなり、刀身が蛇のようにうねり、こちらの皮膚を衣装ごと切り裂いていった。 「ぐっ……!」  腕が切れ、太ももが裂け、防刃チョッキですらもザックリと割れてしまう。  さほど威力があるとも思えない武器なのに、触れただけでここまでスパスパ切り刻めるなんて一体どうなっているんだろう。 「っ……!」  首元に刃が迫って来て、アクセルは慌てて小太刀で防御した。刃先に薄い鉄刀が擦れ、火花が散ってバチバチ明滅する。小太刀の刃が削れて、切れ味が悪くなったのがわかった。  でも今更引くわけにはいかない。こんなところで距離をとったら、一方的に切り刻まれるだけだ。ここは思い切って前に出ないと……。 「あっ……?」  一歩踏み出そうとした途端、がくんと脚がもつれた。怪我と疲労が蓄積していたせいか、身体のバランスが崩れてその場で転倒しそうになった。  ユーベルの剣が上から襲い掛かって来る。  ――しまっ……!  頭から割られることを覚悟した次の瞬間、誰かの影がサッと横切った。  その人はユーベルの剣を華麗にいなし、足元に斬撃を叩きつけて床をバキバキに破壊した。 「おっと」  足元が不安定になったユーベルは少し距離をとり、安定した場所に移動する。他の五人ももれなくユーベルに付き従い、こちらから距離をとった。 「惜しかったねぇ。もう少しで斬れるところだったのに」 「兄上……!」 「まあ、衣を斬っただけでもたいしたものだけどね。この状況じゃ、まともに踊れるのはごく一部の上位ランカーだけだろうし」  言われて、目だけで周囲を窺う。  テーブルは破壊され、床や天井は割れ、死体はそこら中に積み上がって、血の匂いが鼻をついた。会場は原形を留めないほど破壊されており、生き残っている者もアクセルと同じく満身創痍である。  そんな中で、兄・フレインはどこも切られていないように見えた。マントも千切れていないし、一滴の返り血も浴びていない。

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