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第1073話

「ああ、構いませんよ。うさぎの蹴りなど当たりませんから。華麗なうさぎ肉になる覚悟があるなら、いくらでもキックしてきてください」  ユーベルの剣の舞を思い出し、アクセルは顔を引き攣らせた。  そりゃあ宴会場であれだけすごい舞を披露できるなら、蹴りなど当たらないし逆に細切れにされる可能性の方が高いだろう。  ピピは未だに怒っていたが、ユーベルは構わずひらりと手を振った。 「それでは、わたくしはこれで失礼します。今度わたくしに頼み事をする時は、きちんと手土産を持って城まで足を運んでくださいよ」 「は、はい……すみませんでした」 「それと……もしどうしても助けが必要なら、ミューを誘ってみなさい。彼なら、自分が楽しそうだと思えば協力してくれるはずです」 「……!」 「では」  そう言い残し、ユーベルは去っていった。  ユーベルの姿が見えなくなった途端、ピピが慰めるように身体をすり寄せてきた。 「ぴー」 「……大丈夫だよ、ピピ。代わりに怒ってくれてありがとう」 「ピピ、アクセルすき」 「ありがとう。俺もピピのこと大好きだ」  アクセルはもふもふの身体をそっと抱き締めた。  ピピにとっては、飼い主のランクが上でも下でも関係ない。自分を世話して可愛がってくれる人が一番であって、ヴァルハラの掟など知ったこっちゃないのだ。  少なくとも、ピピの中ではアクセルが一番。その次が兄・フレイン。そのピラミッド構造を想像したら、少し気が紛れた。そう言えば、ミューですらピピに飴を与えようとしてそっぽを向かれていたしな……。 「それにしてもミューか……。確かに彼なら、ノリノリで付き合ってくれる気がするな」 「ぴ……?」 「違う意味での不安材料もあるが、見かけたら誘ってみるか。俺一人で行くより心強いし……」  そう言った時、玄関から「こんちはー!」と元気な声が聞こえてきた。  もしやと思い、アクセルは急いで玄関に回った。  いや、この声はもしかしなくても……。

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