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第1072話
「フレインは……まあ、あなたの実兄ですからね。あなたが『助けてくれ』と言えば無条件で助けてくれるでしょう。でもわたくしはそうじゃない。いえ、ほとんどの人は何か見返りがなければあなたに手を貸してはくれないでしょう。こう言うのもなんですが、あなたはまだランクが真ん中程度の一般戦士。一桁くらいになればまた別ですけど、今のあなたはそこまで……」
「わかりました、すみません。もう……ホントにすみませんでした……」
アクセルは遮るように謝罪した。
自分が悪かったとはいえ、これ以上言われるのはさすがに心が痛かった。
――……わかってるよ、俺にはそこまでの価値はないって。
そんなことわかっている。ランキング三位の兄と違い、自分はどこをどう見ても凡人だ。兄がトップ勢にいるから自分も上位ランカーと接触する機会があるけれど、本当だったら気軽に話しかけることも許されない身なのである。
――俺、まだランクも三桁のままだもんな……。
結局、ヴァルハラにおいてはランクこそが全て。戦うことが仕事の眷属 の世界では、強い者こそ価値があるのだ。快適な暮らしも、社会的な地位も、富も名声も、上位ランカーだからこそ手に入る。
今のアクセルは兄のおこぼれに預かっているだけで、自分自身には何の価値もないのだ。
わかっていたこととはいえ、他人にハッキリ言われるとさすがに辛いものがあるが……。
「ぴぃぃ……!」
かなり落ち込んでいたら、ピピがユーベルに向かって低く唸り始めた。後ろ足でガシガシ地面を引っ掻き、今にもユーベルにキックをお見舞いしそうになっている。
――もしかして、俺の代わりに怒ってくれている……?
気持ちはすごく嬉しい。が、今回は相手が悪い。
アクセルは宥めるようにピピの毛並みを撫でた。
「ピピ、落ち着いてくれ。この人はランキング四位のすごい人なんだ。キックするのはNGだ」
「ぴー……」
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