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第1071話
「……一応聞いておきます。何故わたくしにそんなことを頼むのです?」
「だって暇なんでしょう? ユーベル様がついて来てくれたら、絶対心強いと思うんです」
ごく普通の口調でそう答えたら、ユーベルはますます呆れた顔になった。
……何か変なことを言っただろうか。
「あなたは……何というか、時々ものすごく図々しいですよね」
「……えっ?」
「わたくしはあくまでフレインの友人であって、あなたからそんな頼み事をされるような間柄ではないと思うのですが」
「え……それは……」
「わたくしに頼み事をするなら、ちゃんとした手土産を持って自ら城に出向いて礼儀正しく頭を下げて欲しいものですね。暇だからといって、軽々しくお願いされても困ります」
「あっ……す、すみません……。軽はずみなことをしました。大変失礼いたしました」
慌てて深々と頭を下げる。
――ああ、失敗した……。確かに今のは失礼だったか……。
怒らせるつもりなど微塵もなかった。ただ、自分一人では心許ないから、もし手が空いているのなら少しだけ助力を乞おうと思っただけだ。
だけど由緒正しい貴族出身のユーベルからすれば、こうして軽率に下位ランカーからお願いされることは礼儀に反した行為なのかもしれない。
少し反省していると、ユーベルはやれやれとこめかみに手を当てた。
「……あなたを見ていると、フレインに甘やかされて育ったことがよくわかりますよ。何かというとすぐに兄に頼って、それを断られたこともないんでしょうね。幸せな人です」
「う……」
「誰かに助けを求めるということは、誰かの時間や労力を自分のために使ってもらうということです。場合によっては命を懸けることになるかもしれません。あなたは、それだけのことをやってもらう価値がある人なのですか? それだけのことをやってもいいと、相手に思ってもらえる人なのですか?」
「っ……」
辛辣な言葉が、ぐさりと胸に突き刺さった。
ユーベルは更に続けた。
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