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第1075話
憤慨しかけていたら、ミューがヘラッと笑った。
「いや、知らないよ。適当に言っただけ」
「……なんだよ、心臓に悪いな」
「でも、純粋な意味で変なことされてる可能性はあるよね。連絡ないのはいいけど、直接聞きに行っても何も教えてくれないとか、すっごく怪しい。本来ならもう戻ってきてもいいはずだし、ちょっと勘繰りたくなっちゃうねー」
「ミューもそう思うか……。やっぱり、一刻も早く様子を探ってこないとな……」
あんなことやこんなことは冗談としても、兄がよからぬ目に遭っている可能性は否定できない。
普通の戦士 ならともかく、兄は予言の巫女の息子なのだ。神々の中には疎ましく思っている者もいるみたいだし、「透ノ国に閉じ込めておけ」と主張している連中もいるという。治療と称して同じ場所に閉じ込めて、ずっと監視しておくつもりなんじゃ……と思えなくもない。
アクセルは急いでヤドリギを懐に入れ、戸締りをしてからピピに言った。
「ピピ。俺、もう一度施設に行ってくるよ。帰りは……何時になるかわからないけど、なるべく早く帰ってくるつもりだ。ミューもいるから、大事にはならないと思う」
「ぴ……」
「もし万が一俺が帰ってこなかったら、下手に助けに行こうとせず山に帰るんだぞ? そしたら俺が必ず迎えに行く。山で家族と待っててくれ」
「…………」
「じゃあ、留守番よろしくな」
そういってピピに背を向ける。
だが、家を出ようとした途端、珍しくピピが服を噛んで止めてきた。
「ぴー、ぴー!」
「ちょ、ピピ……放してくれ。いい子だから留守番しててくれ」
「ぴー!」
「ピピ、頼むよ。俺は兄上の様子を探ってこないといけないんだ。寂しいのはわかるが、急がないと兄上が……」
「ピピもいく!」
「……えっ?」
急にそんなことを言われ、アクセルは目を見張った。
ピピはじっとこちらを見つめ、真剣に訴えてきた。
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