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第1076話

「ピピ、いつもおるすばん。おるすばん、さみしい。ピピもいきたい」 「それは……」 「ピピ、やくにたつ。アクセルのおてつだい、する」  ガシガシと地面を引っ掻き、連れていけアピールをしてくるピピ。  気持ちはわかるしすごく嬉しい申し出だが、だからといって一緒に行けるかと言ったらNOである。ピピの身体ではあの枯れ井戸を通れないし、外で一人待機させるのもそれはそれで心配だ。  何とか宥めて留守番させようとしたのだが、意外なことにミューが好意的な態度を示した。 「いいんじゃない? ピピちゃんも連れて行こうよ」 「……えっ? いや、それはちょっとマズくないか? ピピがいたら施設に忍び込むことはできないぞ」 「だからピピちゃんは、外の目立たないところに待機させておけばいいじゃん。いざという時の逃げ足に使えるしさ。うさぎの足、頼もしいよー」 「それは……でも……」 「グロアの隔離施設って、何だかんだ神々の領域だからねー。ここでの常識が通用しないこともあるかもしれないしー? 突然戦闘になって、フェンリルとか呼び出されたらどうする? さすがに逃げるしかないよね」 「……え。グロアがフェンリルを呼び出すなんてあるのか?」 「ないとは言い切れないじゃん? 神様たちが誰と仲いいなんて知らないしさー」 「…………」 「僕も腕には覚えがあるつもりだけど、それだって限度ってものがあるし。逃げ足を用意しておくのは大事だと思うなー。ま、乱闘後に自分の足で帰るのが面倒ってのもあるけどー」  ……などと笑っているミュー。  ――確かにミューの言うことも一理あるけど……だからって……。  チラリとピピを見る。  ピピはついて来る気満々らしく、「早く行こうよ」と言わんばかりに地面を蹴っていた。今更「留守番しててくれ」などと言ったら自分が蹴飛ばされそうだ。  様々なことを天秤にかけ、あれこれ悩んだ挙句、結局アクセルはこう答えた。

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