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第1077話

「……わかったよピピ、一緒に行こう。ただし、危なくなったらすぐに逃げるんだぞ? 無理して俺たちを助けようとするなよ?」 「ぴー!」 「なーんて言ってるけど、アクセルこそ大丈夫? いくら大好きなフレインの様子が知りたいからって、無茶しても僕は助けてあげられないからね?」  ミューに釘を刺されて、ちょっとギクッとなった。  確かに自分は、何かに夢中になるとすぐに周りが見えなくなってしまう。今回は助けてくれる人がいるわけじゃないし、十分気を付けなければ。 「だ、大丈夫だよ。そこまで猪突猛進にはならないさ。……さ、行こう」  アクセルは、早速二人を引き連れて世界樹(ユグドラシル)に向かった。  前回と同じ道を通って施設に向かっていると、ミューが軽く話を振ってきた。 「そういやアクセルは、まだ自分が獣化したことないんだっけ?」 「ああ、うん。獣化自体も、見たのは兄上が初めてで」 「へー。僕は何度か経験あるけど、獣化してる最中って、言うほど悪くない気がするんだよねー」 「……え? いや、それはないだろ。周りが見えなくなって暴れたり、挙句の果てには自分の腕を……」  思い出すだけでぞくっとする。  いくら腹が減っていたからって、ピピを襲って食おうとしたり自分の腕を切って食べたりするなんて、どう考えても正気の沙汰ではない。あれを目の当たりにしてしまったからこそ、一刻も早く元に戻してあげなくてはと思ったのだ。  その状況が悪くないだなんて、ミューは一体何を言っているのだろう。 「それは看病する側の視点でしょー? でも獣化してる本人は、至って真面目で幸せなんだよー。好きなものを好きなだけ食べられるし、眠くなったらいつでもどこでも寝られるし、ムラッとしたら適当な相手捕まえてガンガンやれるし」 「……それのどこが幸せなんだ?」 「幸せでしょ。自分の本能に従って好きなように生きられるってことだもん。何も我慢しなくていいなんて、最高じゃん」 「え……」

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