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第1156話

「はぁ……」  身体の隅々まで綺麗に洗い、新しい就寝着に着替えたところで、ようやくベッドに入り直すことができた。自分のベッドはいろんな体液で汚れているので、シーツや枕、何ならマットレスも洗濯する必要がある。  明日の洗濯はちょっと大変そうだな……などとぼんやり考えていると、 「あー……やっぱりお前と寝るのはホッとするねぇ」  兄が腕を伸ばしてこちらを抱き締めてきた。温かい抱擁を感じ、アクセルもおとなしく兄の胸元に身を寄せた。  ――何だかんだで、これが一番落ち着く……。  言葉も喋れない赤子の頃から、兄に包まれながら眠っていた。  思春期に差し掛かった時はさすがに恥ずかしくなり、意味もなく強がって寝室を分けたけれど、結局兄の包容力が恋しくなって後悔したものだ(それから兄が戦死してしまい、十年以上も兄に会えなくなってますます後悔した)。  今は完全な大人だから思春期特有の恥ずかしさはないし、その気になればいつでも一緒に眠れる。というか、たまにこうして寝ないとちょっと落ち着かなくなってくるのだ。  そういう意味でも自分は、いくつになっても兄から離れられないのだとしみじみ思う。もちろん、離れるつもりもないけれど。 「疲れただろうから、明日はゆっくりでいいよ。朝ご飯もお兄ちゃんが作るし、洗濯も私がやっておく」 「……ありがとう。でも鍛錬をサボるわけにはいかないから、あまり遅くならないうちに起きるよ……」 「お前は真面目だね。そういうところ大好き」 「真面目にやらないと、兄上に追い付けないから……。俺は兄上より才能ないから、その分頑張らないと……」 「そんなことないけどね。でもお前は私より頑張り屋だから、私と同じポテンシャルがあったらあっという間に追い抜かされちゃうよ」 「……だといい、けどな……」  いい加減眠くなって、呂律も回らなくなってきた。  アクセルは兄の腕の中で朝まで安眠した。久しぶりに快適な睡眠を得られた気がした。

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