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第1157話

 翌朝。アクセルはいつもよりだいぶ遅く起床した。目を覚ました時には既に兄が朝食を用意してくれていて、すっかり寝過ごしてしまったことに気づいた。 「おはよう、アクセル。身体の調子はどうだい?」 「あ……ああ、平気だよ。よく寝たから疲れもとれた」 「それはよかった。ご飯できてるから顔洗っておいで」  言われるまま、アクセルは冷たい水で顔を洗った。凍り付きそうなほど冷たい水だったので、一気に目が覚めた。 「兄上は今日も鍛錬だよな?」  朝食を味わいながら、兄の予定を確認する。  ちなみに、兄が作ってくれた食事は朝っぱらからスタミナのつきそうな鹿肉のカットステーキだった。一日鍛錬をするにはいいメニューなのかもしれないが、少食のアクセルにとってはちょっと胃が重い。いや、普通に美味しいけども。 「もちろん鍛錬するよ。でもその前に掃除とか洗濯とか、家事もやっておきたいんだ」 「掃除や洗濯なら、俺がやっておくが」 「いや、ベッドの片付けもあるから、どうせなら私がやろうと思って。こういうのは最後まできちんと責任とらないとね」 「っ……」  生々しいことを言われ、思わず噎せそうになった。片づけまでが料理です……みたいなことを言わないで欲しい。  ――兄上だからいいけど、自分の体液が沁み込んだシーツを洗われるって、結構恥ずかしいんだが……。  アクセルはあえて大きく咳払いをし、話を元に戻した。 「わ、わかった……。じゃあ俺は庭で鍛錬させてもらうよ。手伝えることがあったら言ってくれ」 「ありがとう。何かあったら声かけるね」  使った食器を流しに戻し、アクセルは庭に出て準備体操がてら軽くストレッチをした。  それから軽く庭を走っていると、ピピがやってきて隣を並走し始めた。 「そういやピピ、今朝は兄上が食事作ってくれたんだよな? 何を食べたんだ?」 「ぴ?」 「兄上のことだから、ピピの野菜スープも肉たっぷりにしたんじゃないかと思って」

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