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第1560話
「おはよう、アクセル」
そこへ起床した兄がやってきた。
兄は当たり前のように挨拶してきたが、こちらを見るなりポカーンと口を開けて驚愕してしまう。
「お前、それ……」
「あ、兄上……! 違うんだ、これはその……なんか知らないけど、朝起きたらいきなり若返ってて……」
「…………」
「どうしよう……どうしたらいいんだ……。ずっとこのままだったら俺、どうやって生活していけば……」
次の瞬間、唐突に兄がこちらを抱き締めてきた。いつもより腕の力も強く感じて、息苦しいくらいだった。
「あーん、可愛い~! 普段のお前も可愛いけど、少年時代まで若返るとこんな風になるのかー! なんか私まで若返ったような気分になっちゃう! 可愛い、可愛い!」
「ちょ……兄上! 俺、真剣に悩んでるんだぞ!」
自力では振り解けなかったので、両手でぐいぐい押し返す。
通常の自分だったら本気を出せばどうにか抜け出せたのに……純粋な腕力も落ちているみたいで地味にショックだ。
「ごめんごめん、そうだよね。お前は当たり前に不安だよね」
腕から解放し、なでなでと頭を撫でてくる。
身長も縮んでいるせいか、より一層兄との差が開いてしまったみたいでこれもショックだった。せめて身長が同じだったら、同じ目線で話ができたものを……。
「んー、原因として考えられるのは、やっぱり昨日の栄養ドリンクかなぁ」
「栄養ドリンク……って、兄上が昨日市場で買ってきてくれたアレか」
「うん、それ以外にないもんね。多分アレに謎の成分が入っていたんじゃない?」
「入っていたんじゃない? って……なんでちゃんと確かめて買ってこないんだよ」
「だって売り子も『栄養ドリンクです』としか言ってなかったんだもの。そう言われたら、それ以外の効果があるなんて思わないでしょ」
開き直りのような言い訳に、ちょっとイラッとした。一体誰のせいでこんな姿になっていると思っているんだか。
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