1562 / 2195
第1562話
「お前、この期に及んでもわからないなんて言わせないよ? お兄ちゃん、何度も言ってるよね? お前は可愛くてモテるから、狙ってるヤツは山ほどいるの。普段の姿ですらちょっかいを出してくるヤツがいるのに、少年の姿だったらなおのことでしょ。力も落ちているみたいだし、それじゃ万が一襲われた時も抵抗できない。私が出掛けている間にお前が攫われでもしたら、私は居ても立っても居られないよ」
「は、はい……」
「だから今日は絶対外に出ちゃダメ。わかった?」
「…………」
「お返事は?」
「は、はい、兄上……」
兄の立場からすれば、その懸念は最もだ。
治るまで誰にも会わずに引きこもっていなければならないのは不便だが、明日には元に戻っていると信じて今日はおとなしくしていよう。室内でも簡単な筋トレやストレッチくらいはできるし。
「さ、ご飯にしようか。せっかく作ったんだから、温かいうちに食べないとね」
焼き立てのトーストとベーコンエッグ、熱々のコーヒーにカレースープを添えて、今日の朝食にした。これで全部カレーを使い切ったので、後で食器と一緒に寸胴鍋も洗っておこう。
ちなみに庭に出てピピにご飯を出してやる時、
「ピピ、ご飯だぞ」
「ぴー♪ ……ぴ?」
小屋からすっ飛んできたピピだったが、アクセルの見た目が若返っているので一瞬「誰?」みたいな顔になった。
だがすぐに匂いでアクセルだと気付いたのか、あまり気にすることなくこちらに寄ってきた。
「ごめんな、なんか朝起きたらこんな格好になってて。でもすぐ元に戻るはずだから、しばらく我慢してくれよな」
「ぴー」
ピピはマイペースにカレースープを味わっている。
ピピにとってはアクセルの見た目より、食事の美味しさの方が重要であるらしい。別人判定を受けずに済んでよかった。
アクセルも戻って朝食を取り、食べ終わった後は皿と寸胴鍋をまとめて丁寧に洗った。
キッチンで後片付けをしていると、兄が顔を出してきてこう念を押してきた。
ともだちにシェアしよう!