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第1727話※
――この人、自分を機械で改造してるのか……!?
そんなことあり得るのか? ヴァルハラでは、例え四肢が欠損しても棺に入れば全て元通りになる。
ということは、ナダルは五体満足な状態から自分で腕を切り落とし、わざわざ機械を入れて身体を改造したということか……? 鍛錬で自分を鍛えるより、自分を改造することを選んでしまったのか? そんな馬鹿な……。
「っ……!」
驚愕していたら、機械の腕から小さな矢が複数飛んできた。
慌てて避けたが、そのうちの一本が腹部に突き刺さり、一気に身体が重くなってしまう。この矢にも何らかの毒が仕込まれていたみたいだ。
――マズいぞ、これは……!
狂戦士になっていても身体の不調は当たり前に感じる――むしろ感覚が研ぎ澄まされている分、通常より身体の不調を覚えるのも早いので、毒や薬で動きが鈍らされるとかなり戦いづらくなる。
現にアクセルの全身は鉛のように重くなり、いつもは一足飛びで間合いを詰められるところ、なかなか懐に飛び込めず手をこまねいている状態だ。
やっていることは卑怯だが、ある意味、狂戦士の弱点を上手く突いた戦法とも言えるかもしれない。
「ハッ! 狂戦士どもも、こうやって毒を盛られたら手も足も出ねぇよなぁ?」
ナダルが馬鹿にしたように鼻で笑ってくる。
「生身の野郎が改造戦士にいいようにやられるのは実に気分がいいぜぇ、ゲハハハハ」
「改造戦士って……何故あなたはそんなことを」
「てめぇにはわかんねぇよ。ヴァルハラには、どんなにランクを上げても狂戦士になれねぇヤツもいるんだ」
「えっ……!?」
「そういうヤツは、自分を改造するしかねぇだろ!」
その台詞と共に、ナダルがこちらに腕を向けてきた。
腕先から再び矢が飛んできて、アクセルは転がりながら必死に避けた。これ以上毒を食らったら本当に動けなくなる。勝つどころの話じゃない。
――でもそうか……。ナダルの言動が少しわかってきたぞ……。
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