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第1863話(フレイン視点)

「だからこそだろ。死体さえ見つからなきゃグダグダ言われねぇんだ。綺麗に始末しておくに限る」 「そういう問題じゃ……」 「オレだって、何でこんなことしちまったのかわかんねぇんだよ。気付いたら身体が勝手に動いて、こいつをぶん殴ってたんだ。……でも、そんな言い訳が通用するとは思えねぇ。やっと念願のヴァルハラに来られたのに、こんなところで変なケチつけられちゃたまらねぇぜ」 「…………」 「だったらこいつは獣に食われたってことにして、始末しちまうのが一番だ。上位ランカーつってもそこまでランクは高くないし、こいつ一人行方不明になったところで誰も気にしねぇよ。わかったら早く手を貸せって……」  聞くに堪えず、フレインは後ろから髭の新人を斬りつけた。  すぐに殺してしまってはもったいないので、急所を外した上で背中をバッサリ斬ってやった。 「ぐげゃッ!」  案の定髭の新人は手にしていたスコップを放し、地面に転がって悶え始めた。 「……何だかすごい新人がいるねぇ? うちの弟は、こういうところの運が本当に悪いな」 「だ、だ……誰だあんた!」  黒髪の新人が驚いて声を上げたので、フレインはサッと太刀を振り払った。  向かってこられると面倒なので、とりあえず駄賃代わりに腕を一本斬っておいた。 「口の利き方には気を付けようね。私はアクセルみたいに優しくないから、イラッとしたらすぐに斬っちゃうよ」 「ぐ、は……」  わざとにっこり微笑み、新人たちに目を向ける。他の二人も、いきなり現れたフレインにすっかりビビっているようだった。  フレインは殺気を剥き出しにしたまま、弟の状態を確かめた。  ――息は……ない、か……。  目が半開きの状態で固まっていたから、死んでるかもしれない……と覚悟はしていた。  とはいえ、実際に確かめてみるとやはり悲しい。  どこが狩りの場所としてふさわしいか、どうすれば上手く引率できるか等、事前にあれこれ準備していたのに……どうしてこんな酷いことができるのだろう。

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