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第1864話(フレイン視点)
スレイプニルのオーラのせいだと言われればそれまでだけど、それでも可愛い弟を殺した新人は許せない。
――ああ、こいつら全員殺したいなぁ……。
直接手にかけたヤツも、それを止めなかったヤツもみんな同罪だ。
この四人を全員滅多斬りにしても気は晴れないだろうし、何度殺しても許せないと思う。
ただ……今は彼らを斬るよりも、弟を棺に入れることの方が大事だろう。
フレインはゆらりと顔を上げ、新人たちを見据えた。
「言い訳は後で聞いてあげる。今はとりあえず下山しようか。逃げたら問答無用で殺すから、そのつもりでね」
「…………」
「返事は?」
「は、はひ……」
新人たちは皆面白いくらいに顔を青くして、首をこくこく動かした。
フレインは弟の遺体を背負い、そのまま急いで下山しようとしたのだが、
「ま、待って、くれ……た、すけて……」
髭面の新人が潰れたような声を発した。地面に転がったまま、起き上がれないでいるようだった。そうか、さっき背中をバッサリ斬りつけたんだっけ。
「自力で動けないのかい? じゃあそのままでいるしかないね」
這いつくばっている新人の側に寄り、上からにこりと微笑みかける。
「弟を棺に入れて、他の人の話を聞いて、それでも時間が余ってたら迎えに来てあげるよ。まあ、その前に獣に喰われちゃうかもしれないけど」
「っ……!?」
「この場で生かさず殺さずの拷問をするより、ずっと優しいでしょう? せいぜい生き延びられるといいね」
「まっ……!」
その後も何やら新人が後ろで喚いていたが、フレインはかまわず下山した。
他の三人も髭面の新人が気掛かりだったようだが、皆素直についてきてくれた。まあ、腕が潰れたり失くなったりしている人もいるから、他人に構っていられる状況ではなかったのかもしれないが。
「なるべく早く蘇生できる棺がいいな。空いているのはどれ?」
オーディンの館に着くやいなや、フレインは係を捕まえて棺に案内させた。
館の奥にある大きめの棺に弟を入れ、パタンと蓋を閉める。自分のせいだとは思わないが、何だか気が重かった。
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