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第1926話

「……そう? 仮に勘違いしたところで、私にアプローチしてくる男なんていないけど。むしろ要注意人物だと思われてる気がするな。私が声かけると、下位ランカーはみんなビビって逃げちゃうし」  もうお前がいなかった頃とは違うんだよ……と言う兄。 「…………」  アクセルはちらりと兄を見上げ、また目を伏せた。  身体が温まってくると同時に、モヤモヤした気持ちも少しずつ晴れてくる。 「そう、なんだろうな……。結局これも、俺のネガティブな妄想にすぎない。兄上は俺のこと一番に考えてくれているのに、何でこんなこと考えちゃうのかもわからない……。こんな風に疑ってしまう自分も嫌になる……」 「…………」 「……でもひとつだけ言わせてくれ。俺は兄上が好きだ。世界で一番愛してる……。だから絶対、他の誰かのものにはならないでくれよな……」 「……ふむ」  兄がシャワーのお湯を止め、こちらを床に寝転ばせてきた。  そして上からのしかかりながら、にこりと微笑んでくる。 「とりあえず今のお前は、私の愛に飢えているってことでいい?」 「え……」 「私は普段からお前のことめいっぱい可愛がってるつもりだよ。誰がどう見ても疑う余地がないくらい、お前を愛してる。それでも時々こうして疑いたくなるってことは、身体が愛に飢えているってことじゃないの?」 「それは……」 「いや、別におかしなことじゃないんだよ? 誰にだってなんかこう……無性に相手が恋しくなる時ってあるもの。明確な理由はないけど、何となくそういう気分とか。私だって何となくの気分でお前を抱き潰したことたくさんあるし」 「えっ……!?」  言われて、かあっと頬が熱くなる。  確かに兄が仕掛けてくる時は大抵不意打ちみたいな流れで、いい雰囲気になったからその勢いで……ということが非常に少ない。  自分は寝るつもりでベッドに入っていたのに半ば強引に兄に襲われて、気付いたら途中で失神していた……なんてこともザラだ。  こちらを抱いている兄は楽しそうだし、自分も何やかんや気持ちよくて幸せだったから、あまり深いことを考えてこなかったけど……。

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