2193 / 2194
第2193話
「全身ずぶ濡れの状態で服を脱いで、バスタオル一枚でガタガタ震えてるわけでしょ? 服を受け取った後は幸せそうに『あったかい』とか言ってたし。これはそそられる人いるだろうなって、ちょっと思っちゃった。フレインが心配するのも無理ないね」
「ええっ? そんな……」
「まあ、これはアクセルが悪いんじゃない。きみはごく普通の行動をしていただけだからね。ただ、フレインの心配も理解できるって話。これ以上気をつけるのも難しいけど、例えば服を脱ぐ時は茂みに隠れるとか、人目につかないところでやるとか、そういう風な対策はできると思うよ」
「は、はあ……」
アクセルは曖昧に返事をした。
まさかバルドルからもそんな忠告を受けるとは思わず、顔が引き攣りそうになる。
――女性じゃあるまいし、何で着替えるのにいちいち茂みに隠れなきゃいけないんだ……。そそられるとか言われても困るんだが……。
何だか複雑だ。そんなこと言ったら兄だって充分綺麗なのに、何故自分ばかり注意されなければならないのだろう。不公平な。
「……さて、こんなものかな」
兄が水から上がってきた。丸太をドシーンと地面に放り投げ、無造作に服を脱ぎ出す。
お決まりのようにバルドルがバスタオルを差し出していたが、兄も濡れたまま下着一枚になっていた。あれはそそられないのか。
意味がわからん……と内心不満に思っていると、兄が自分の髪を拭きながら言った。
「お前、まだ鍛錬続ける元気ある? あるなら集中力強化の鍛錬でもしてなさい」
「集中力強化、か……?」
「そう。いざという時に狂戦士モードが継続しないのは困るだろう? ただでさえお前は注意力散漫なんだから、余計なことを考えずに目の前のことに集中しないと」
「う、うん……」
「本当は焼けた砂場を歩くのが一番手っ取り早いけど、今から上級者コースに行ったら夕方になりそうだしね。ここは静かに瞑想するのがいいんじゃないかな」
「ああ、そうだな……」
ともだちにシェアしよう!